胸と背中から一直線に病巣を照射
がん治療で注目を浴びている放射線の三次元(立体)照射治療。専門的には定位手術的照射(SRT)と定位放射線治療(SRT)の二つの治療法をいうが、あらゆる方向から放射線を集中照射して治す治療方法だ。
以前の放射線治療は、がん病巣の前後から照射する一次元照射が通常であった。例えば肺がんを例にとると、胸と背中からがん病巣を一直線上において照射する方法である。
二次元照射は、一平面上のいろんな角度から照射する。先の肺がんを例にとると、胸を横に輪切りにした一平面上で様々な方向から照射する。
三次元照射とは、がん病巣の一点に四方八方から放射線を当てる方法だ。放射線の交わるがん病巣が受ける線量(放射線の量)は非常に大きいが、その周辺の正常細胞が受ける線量はほぼゼロとなる特徴がある。副作用を極力抑えることができ、切れ味鋭い治療効果が得られるため「切らない手術」と評価されている。
手術不可でも治療できる画期的療法
Aさんは、右肺の下葉区域切除手術を受けた2年後今度は左肺に扁平上皮癌(へんぺいじょうがん)が見つかり、再度大がかりな左肺の下葉区域切除手術と術後の放射線治療を受けることになった。この時の放射線治療は二次元照射で、一回2グレイの放射線を25回受けたが、それから半年も経たないうちに左肺に3cm大のがん再発が見つかった。
5月前に左肺の大手術を受けていたので、再手術は無理と判断。抗がん剤も効かない。従来の放射線治療(二次元)も治癒させるには不十分と考えられ三次元照射を選択。
治療は成功し、再発がんは跡形もなく消滅し以前と変わらない生活をしている。
世界保健機構(WHO)のワクチン安全性諮問委員会は、日本で女子頸がんワクチンの接種の積極的な勧奨を中止していることについて、23日までに「若い女性をヒトパピロウイルスによるがんの危険にさらしている」と批判した。
日本でワクチン接種後に全身の痛みやしびれなどが報告されている問題では、厚生労働省の専門部会がワクチンの成分が原因であることを否定したが、諮問委員会は「ワクチン接種の合意に至っていない」と懸念を示した。また「薄弱な根拠によって有益なワクチンを使わないことは、実質的な損失につながる」と警告した。
諮問委員会は、フランスの医薬品・保健製品安全庁が約200万人の少女を対象に行った研究でも、接種者と未接種者との間で副作用の調査結果は、ほとんど差がなかったことから、「仮にリスクがあったとしても、接種しない事による不利益が多い。がんを防ぐ利益を勘案すべき」と指摘した。
~がん克服に向かって~
がんセンターなどが調査
「ヘモグロビンA1c」と呼ばれる糖尿病の診断指数の数値が高い人ほど、がんの発症リスクが高まる可能性が高いという研究結果を、国立がんセンターと東京女子医大のチームが21日発表した。
糖尿病患者はがんになる可能性が高いことは、すでに報告されているが、ヘモグロビンA1cの数値があまり高くない「糖尿予備軍」の人でも、がんの発症リスクが高まることが示されたのは初めて。調査に携わった東京女子医大の後藤温(あつし)助教授(免疫学)は「糖尿病予防が、がん予防につながる可能性がある」と語る。
ヘモグロビンA1cは、1~2ヶ月間の血糖値の状態を反映する血液検査の検査値。数値が6.5%以上だと糖尿病が疑われる。
チームは、1990年と93年に岩手県、長野県、長崎県など8県に住み、糖尿病の調査に協力した男女やく3万人を対象に、約15年かけて追跡調査を実施。ヘモグロビンA1cの値を●5,0%未満●5,0~5,4%●5,5~5,9%●6,0~6,4%●6,5%以上の5郡に分類し、大腸がんや肝臓がんなどすべてのがんの発症との関係を分析した。
その結果、ヘモグロビンA1cが正常とされる「5,0~5,4%」より高い人ほどがん発症リスクが上昇。「6,0~6,4%」の人は正常の人の1,28倍、「6,5%以上」の人は1,43倍高かった。
~がん克服のために~
3年半見逃し患者死亡
名古屋大学附属病院は21日、別の病院で腎臓がんの手術を受け、経過観察のため定期検診をしていた患者の肺がんの兆候を、3年半に渡って見逃していたと発表した。患者は、2012年6月に重度のがんと診断され、約2年後に死亡した。
外部の専門家を交えた名古屋大学の調査委員会は「初期の段階で発見することができた」と指摘。病院はミスを認め、遺族に対し賠償する方針を示した。
調査委員会の報告によると、患者は40代の男性で、07年5月に他の病院で腎臓がんの手術を受け、同11月から年2回、転移・再発がないかを調べるため名大病院でCT検査を受診していた。
転移はなかったが、08年の検査で左肺に別のがん可能性がある影が写っていた。09年5月の検査では影が大きくなっていたが、主治医・放射線科の専門医共き気付かなかった。
報告書は「遅くとも09ねん5月には異常を確認することができた。当時治療していれば根治できた」と指摘。名大病院の石黒院長は「深く謝罪し、二度とこのようなことが無いようにする」と誓った。
斎藤史郎(さいとう しろう)先生
国立病院機構東京医療センター泌尿器科医長
東京医療保険大学大学院臨床教授
1982年 慶應義塾大学医学部卒業 医学部助手
1986年 琉球大学医学部助手
1987年 慶應義塾大学医学部助手 泌尿器科チーフレジデント
1986年 立川共済病院医員
1992年 米国メモリアルスローンケタリングがんセンター研究員
1995年 慶應義塾大学医学部助手
1997年 慶應義塾大学医学部講師 国立病院機構東京医療センター泌尿器科医長
現在 国立病院機構東京医療センター外来診療部長 東京医療保険大学院臨床教授
前立腺がん 小線源療法のリーダー
草創期から前立腺がんの小線源療法に注目し、その普及に努めてきた。「小線源療法は、低リスクから高リスクまで、限局性前立腺がんの治療法として確立しつつあります」と語る。
がんは新生栄養血管を要求する
がん細胞は、正常な細胞よりも増殖力が旺盛だ。実験室で、腎臓や肝臓の細胞を培養して増やすことが出来ればその治療に少なからず利用できるが、現在の先端技術でも研究段階だ。一方、がん細胞の培養は至って簡単だ。栄養さえ与えておけばほっておいてもどんどん増えていく。今日3cmだった肝臓がんが1ヶ月も経たないうちに5cmになったりする。
それだけ増えると言う事は、栄養を旺盛に要求していると言える。がん細胞は、人間が持っている通常の栄養血管だけではがん細胞自身をの生命を保つことができない。がん細胞自身を養うために腫瘍新生栄養血管というオリジナルな栄養パイプを伸ばし張り巡らせることで自分のテリトリーを守り、家族をすさまじい勢いで増やしていく。
がんを兵糧攻めにする
がん細胞に侵されると、がん細胞に栄養をとられて正常細胞の機能が低下し、貧血になったり、体重がげんしょうする、肝臓や肺などの働きが衰えるなどの弊害がでてくる。さらに免疫力が低下して間接的にがん細胞の増殖を野ざらしにするばかりでなく、抵抗力がなくなることで肺炎などもおこしやすくなる。
逆にがんの申請血管を根絶すえば、がん細胞は生き続けることが出来なくなり、あっという間に死滅してしまうことも考えられる。がんの新生栄養血管叩いて兵糧攻めにするということは、増殖力旺盛ながんのウイークポイントであり、一つの重要な治療手段として期待される。
新生栄養血管とは?
通常の健康状態では新生血管(新しい血管)が作られることはない。新生血管がつくられるのは、ケガをした部分や、慢性関節リウマチ、妊娠などの時だけだ。
しかし、がんの場合は新生血管が行われるのは細胞ががん化するよりも早いと言われている。0期でもすでに血管新生が始まっていることがしばしば見られ、進行がんへのシナリオがすでに準備されているという。なんとも恐ろしい話だ。
ただ、新生血管が新生血管が出来ただけでは《進行がん》ではない。新生血管に乗ってがん細胞が広がった時に進行がんとなるので、その前の新生血管を叩いておけば良いわけだ。
がんと新生血管
がんの増殖速度は血管新生に依存
①がん細胞の芽生え
②がん新生栄養血管因子の放出
③がんが新生栄養血管を伸ばす
④がんが栄養補給路を確保
⑤がんの増殖始まる
⑥正常細胞の弱体化
⑦免疫細胞の無力化
⑧がんのコントロール下におかれる
がんは酸素や栄養を、通常細胞よりはるかに多く必要とするためがん細胞は新生血管誘導物質を出して、身近な血管につなぐ腫瘍血管を誘導する。この新生血管がなければがんは大きくなることができない。
がんが進行すると、エイリアンのように張り巡らせた新生血管だらけになる。そうなる前に新生血管を叩くことががん治療の必要事項と考えられる。
新生血管を叩くことによって、がんを根治出来る可能性がある。日本人の二人に一人ががんになり三人に一人ががんで亡くなるという現代。早期発見と共に新生血管を叩く方法の両方が開発されれば、がん治療に光明が射すはずだ。~期待してやまない~
~がん克服に向かって~
術後は人それぞれ
乳がんの手術で両胸の大部分を摘出した人から~
その悲しみに対して、「おっぱいより命」「胸が無くなることに何も思わなかった」「両方とってさっぱり」などという声も寄せられた。その一方、「10年以上前に乳がんの手術をしてリンパ浮腫(リンパの流れが滞り腕が腫れる)を発症。左腕は右腕の2倍近く腫れ上がり、不便な生活を送っています。あの時がんにならなければ・・と今さらどうにもならないことを考えてしまう。生かされているのに感謝できないの?と問われれば、その通り。助かっても生きていくのがつらい人間もいます」「がんが人生を支配するわけではありません。最悪死ぬこともあるけれど、それは他の病気も同じ。【自分は仕事で頑張っている。こんないい家族がいる。こんな趣味がある。人のために尽くす。そしてがん患者でもある】という事ではないでしょうか。人生の一つにがんがある。私の場合はそう気づいておちつきました」術後の過ごし方、考え方も人それぞれだ。
生存率を告げる意図は?
乳がんで治療中のタレント、北斗晶さんが、「ステージ2bで医師から5年生存率が50%と告げられた」と告白したことで、乳がんの専門医から「患者に誤解を与える」との手紙が毎日新聞によせられた。
「同じステージ2bでも、腫瘍の大きさやリンパ節転移の数で予後が大きく違う。さらに腫瘍の悪性度、治療による効果の差を加味すれば、その差は大きく違ってきます」という。
そもそも、医師が生存率を患者に告げる意図は何なのか。聖路加病院ブレストセンター長・山内英子医師に尋ねた。
「治療を勧めるために生存率を告げる場合もある」と指摘する。例えば、手術後の抗がん剤治療で再発率が下がる場合。抗がん剤に抵抗がある患者が決断に迷うと、少しでも再発率を下げたいという医師の立場から「抗がん剤治療をしない場合は・・・」と生存率を告げることもあるという。「医療者は、目の前の患者に対して適切な指導をする。同じステージでも自分に当てはめるのは良くない。疑問や不安があれば、まずは主治医に聞くこと。医師に聞きずらい場合は、病院内の相談支援センターなども利用して欲しい」とはなす。
病でも自分らしさを
山内:乳がん患者には若い人も多く、そのなかには「若い女性」という集団から外れてしまったと疎外感を覚える人も多いようです。「がんになってもあなたらしさにかわりはない」ことを心に留めて欲しい。
医師としてアメリカで長く暮らした山内さん。「米国は、人と違って当たり前という文化。病さえ個性なんです」。病を通して「自分らしさはなにか」「生きるとはなにか」も見えてくるはずだと話す。「いくら健診を受けていても、がんになる場合もある。でも、がんを経験したサイバーはより輝きを得ることもできるし、その力になりたいと思っています」
~がん克服のために~
東京YMCAが導入
乳がん手術後の患者の体をほぐし、患者同士の交流も促す「アンコア」というプログラムがある。乳がん手術では乳房や脇の下のリンパ節を切除するため、術後暫くの間痛みで腕が高く上げられず、また傷をかばうことで関節や筋肉がこわばったりする後遺症がみられる。アンコアは、そのような体をほぐすために専門家による運動や講習、患者同士の交流を組み合わせたプログラムで、1970年代にアメリカのYWCA(キリスト教女子青年会)で考案され、日本では、2005年に東京WWCA(千代田区)が導入し、これまで延べ約340人が参加。
年2回5月~7月・10月~12月開催
週1回、計8回開催。●専門家による食生活の指導やリン浮腫予防のマッサージ講習●参加者同士の情報交換などのグループミーティング●スタジオでのストレッチ運動●プールでのエクササイズ を計2時間行う。
スタジオとプールは女性専用で、他の利用者と一緒にならない様配慮されている。術後8週間以上経過した女性が対象。定員は16名。参加費は2万1600円。
利用者の声
右胸を手術したという女性(49)は、「一般的なスポーツクラブに通う選択肢もあったが、更衣室で手術痕を見られることに抵抗があり、病気について説明する心も負担だった」と話す。親兄弟や会社にも病気の事を話していないという別の女性(49)は、「ここでは何も隠さずに話せる。悩みや苦労を共有できる仲間が出来たことがうれしい」と話す。また別の女性(57)は「病院では手術後のケアが不十分で、ネットで探して来た。このような場所が増え、各病院でケアを考えたり紹介するシステムが欲しい」と訴える。
問い合わせ先
東京WMCA(encore@tokyo.ywca.or.jp)
~がん克服のために~
アミノサン濃度の変化を分析
血液中のアミノサンの濃度を測って、がんのリスクを評価するスクリーニング検査が、全国の医療機関で普及し始めている。初期発見の難易なすい臓がんの発見も期待される。血液から簡単に早期発見が可能なため、がん検診の一つとして期待が大きい。
全国1000ヶ所の医療機関で導入
人の体のタンパク質は、主に20種類のアミノ酸で作られている。健康な人血液の中にあるアミノ酸は一定に保たれているが、がんなど病気になるとその濃度バランスに変化がおこる。つまり、健康な人とがんなどの病気にかかった人とでは、血液中のアミノ酸のバランスが違ってくるわけだ。
その違いを健康な人とがん患者のデーターから解析して、がんのリスクを評価するんが「アミノインデックス・がんリスク・スクリーニングだ。食品メーカー大手の味の素が、10年程前から、全国の医療機関の協力を得て、約20000人の血液を分析して開発した。
現在検査できるがんの種類
現在この検査方法が適用されるのは、男性で、●胃がん●肺がん●大腸がん●すい臓がん●前立腺がんの五つ。女性では、●胃がん●肺がん●大腸がん●すい臓がん●乳がん●子宮がん●卵巣がんの七つのリスクが評価できる。
奈良県宇陀市の医療機関「グランソール奈良」は、昨年12月からアミノインデックスの検査を導入した。辻村貴弘院長は、「しっかりしているので導入した。これまでに400人ほどが受けた。早期発見、早期治療に結びつく検査法として期待している」と話す。
検査を受けた結果は、A,B,Cの三段階のランクで評価される。Aは健康な人とさほど差はないが、B,Cになるとがんのリスクは高くなる。例えば、「胃がんリスクC」と判断されれば、通常の人のがん有病率は約10倍と判断する。これを人数で表すと、C判断を受けた98人のうち1人ががんの可能性があるという。同じ胃がんでも、ランクBだとがんにかかっているリスクは低くなり、625人のうち一人という確率になる。リスクBの人は、通常のがん検診を勧められる他、運動、野菜・果物の摂取などがん予防につながる生活改善などの指導が行われる。
がんのリスクの高い人を見つけ出す
この検査法を、当初から共同研究してきた足利工業大学看護学部長の山門実さんは、「この検査は、がんのリスクの高い人(ハイリスク群)を見つけ出す方法として有効だ。日本では、がん検診を受ける人ん比率が世界的に診ても低い。血液を調べるだけで見つけ出せるので検診者の増大につながれば」と話す。
特にすい臓がんに注目
最近、特に注目されているのがすい臓がん。手術が可能な段階の患者と思い進行がんの患者のアミノ酸濃度が同じようなパターンを示すことがわかり、今年6月に開催された日本膵臓学会で、すい臓がんの早期発見法としての成果が「臨床研究部門賞」を受賞した。すい臓がんは早期発見が難しいだけに今後の期待は大きい。
すでにある健診と組み合わせる方みある。大腸がんの場合、便の中に血が混じっているかを調べる検査がある。この検査で異常なしと判断されても、アミノインデックスではランクCというケースもありうる。血便検査で陽性の上、アミノインデックスでもランクCなら、がんのリスクは一段と高くなる。
問題は、現在アミノインデックス検査には保険が適用されないことだ。医療機関によって差はあるが、自己負担額は約2万円程だ。予防医療に力を入れる神奈川県は、今年9月から、自己負担を軽くするため、補助金を出すようにした。がんを減らす社会を目指し、保険適用を早期に実現出来るようにお願いしたい。
~がん克服のために~