がん克服【放射線治療の権威】


中山優子(なかやまゆうこ)先生

神奈川県立がんセンター放射線腫瘍科部長

1959年 神奈川県横須賀生まれ

1984年 群馬大学医学部卒業

1999年 同大     放射線科講師

2005年 東海大学医学部放射線科准教授

2008年 神奈川県立がんセンター放射線科腫瘍科部長就任

中山先生に聞く

放射線治療医の魅力

 放射線治療を専門とするがん専門医のことを、私たちは放射線腫瘍医と言っていますが、ここでは分かりやすく放射線治療医という言い方をします。

 私が卒業した群馬大学医学部は、放射線治療がとても盛んで、講義も臨床実習も内科や外科同じコマ数があり、お蔭でびっしりと放射線治療について学ぶことが出来ました。

 放射線治療が対象とするがんは広範囲です。がん治療では通常、消化器、呼吸器など診療科ごとに特定の臓器への関与に限られます。しかし、放射線治療は、脳腫瘍から骨、皮膚、その他全ての臓器と横断的に関わると言うのが、私にとって一番の魅力でした。医療手技についても幅広く習得できました。日常臨床で、頭頸部の診察なら喉頭ファイバー、肺の診療なら気管支ファイバー、消化器であれば消化管の内視検査、婦人科であれば内診をやりますから、このような手技的にも幅広く経験できるのです。

 放射線治療では、人の身体全体を診ることにより新たな知識を得ることができます。たとえば、放射線治療は、喉頭がん、子宮頸がんの早期には非常に高い治療効果があるので、同じ扁平上皮がんの肺がんでも治療効果は高いはずだ、などの考えが出来るようになります。

 このように、医師としての深い知識を横断的に得る事ができたのも大きな魅力だと言えます。

幅広い放射線治療の可能性

 がんにおける放射線治療の活用法は幅広いものです。まず、がんの根治を目的とする根治照射、延命を図るための姑息照射、そして骨転移・脳転移などの症状を和らげる緩和照射まで適応が可能です。それに加え最近では、一方向からの放射線の線量を変えたり、精度高く照射部位を絞ったり、重粒子線などを用いることによる治療のバリエーション拡大で、個々の患者さんに会った治療のの選択が出来るようになりました。 

 放射線治療の特徴として考えられるのは、まず身体への侵襲の少なさです。放射線治療は一般に身体外からの照射ですから、メスを入れずにすみます。また、放射線治療は、局所療法ですので、抗がん剤とは異なり全体の副作用が少ないのです。そのため、全身状態の悪い人や高血圧・心臓疾患などの合併症を患っている方、高齢者にも適応しやすいというメリットがあります。

 もう一つの特徴は、臓器の機能保持が可能だと言う事です。同じ局所療法でも手術とは異なり、放射線治療せは臓器を残し機能を温存することができます。例えば、声門部がんでの後頭部摘出などは、患者さんのQOLに関わる大変重要な問題ですが、放射線治療が適応できれば喉頭部を残すことが出来ます。臓器を残すというメリットは、非常に大きいと思います。

 放射線治療が有効ながんの代表は、早期の頭頸部がんです。その他、子宮頸部などの扁平上皮癌には非常に高い効果があります。

 また、進行がんにも適応が確立しつつあり、遠隔転移のない肺、食道、頭頸部の進行がんでは抗がん剤と併用する科学放射線療法が積極的に行われています。さらに、術後の照射にも使用が拡大しています。乳がん乳房温存手術後の放射線照射により、術後の顕微鏡的な残存腫瘍を根絶するというものです。この治療により再発リスクが3分の1に減少することが明らかになっています。

 放射線治療の新しい分野である重粒子線治療についても具体的な有用性が明らかになっています。骨肉腫や悪性黒色腫などの難治性腫瘍や穏やかな背索腫などで効果を上げています。今までのX線では治らなかったがんが治癒できると言う事は画期的なことです。何よりも患者さんにとって非常に大きな朗報と言えるでしょう。重粒子治療が行えるのは千葉県の重粒子医学センター病院など日本全国で現在3つしかありませんが、今後増えていくでしょう。

がん治療に関わる先生方にも、知ってほしい

 我々からのアプローチ不足もありますが、がん治療に関わる先生方は放射線治療のメリットをあまりご存じない方もいらっしやいます。たとえば、頭頸部と食道に合併しているがんでは、放射線治療により療法治療できるという大きな利点があります。国でも、がんプロフェッショナル養成プランにより、放射線療法に関する腫瘍専門医の養成を推進しています。

 中山先生は、各種がんのスペシャリストの先生方と連携し、治療・手術前に治療法の検討会を設けていければと話す。

~がん克服~

がん克服【最新がん統計】


2012年新規がん患者86万人

 国立がんセンターは29日、20012年に新たにがんと診断された患者は全国推計で、86万5238人だったと発表した。前年より約1万4000人増加した。今回は初めて全都道府県の集計ができ、比較も出来る。

部位別患者一位 男性・胃 女性・乳房

 がんと診断されたのは男性50万3970人女性36万1268人。部位別患者数は男性は①胃②大腸③肺④前立腺⑤肝臓ーの順に多く、前年4位だった大腸がんが2位になった。女性は①乳房②大腸③胃④肺⑤子宮で、前年と同じだった。男女とも、胃・大腸・肺が上位を占める。

 前年は40県分のデーターだったが、今回は大都市の埼玉・東京・福岡が新たに加わり、ほぼ全数が把握でき度の高い28県分のデーターを基に推計した。同センターでは、7月にホームページ「最新がん統計」で一般向けに概要を説明する予定だ。

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