総務省・7道県に是正勧告
総務省は30日、がん検診の精度を保つため都道府県が実施する事項評価で、17都道府県を抽出して2012~2014年度の状況調査を行ったところ、約4割に当たる7道府県で不備が見つかり改善勧告をしたと発表。
特に北海道は評価自体をしておらず、制度の低下を防げなかった疑いがある。青森、埼玉、愛媛、福岡、長崎は主な四っの項目の一部が未実施だった。香川は、毎年度の評価をしていなかった。
抽出調査をしなかった30府県でも不備がある可能性があり、総務省は「がん検診の質が十分に確保されていない状況がみられる」として、所轄する厚労省に改善を勧告した。高市早苗総務相は記者会見で、「勧告を着実に実行して頂きたい」と語った。
北海道のある医療機関では、12,3年度に胃がん検診を受けた後、精密検査が必要とされた人の割合が30%を超え、適切とされる値(11%)の約3倍にもなった。総務省は、「多くの異常のない人が、がんと疑われたようだ」と指摘する。逆に、がんがあるのに見逃したと疑われることは見つからなかった。
都道府県は、①受診率やがん発見率など国が設定した指標のモリタリング②外部の有識者会議による評価③評価結果の公表④検診の実施主体となる市町村への指導ーなどにより、検診結果を検証するよう求められている。
北海道は4項目とも未実施。埼玉は協議会の評価を受けておらず、結果も未公表。青森・愛媛は評価結果未公表。福岡・長崎は市町村に必要な指導をしていなかった。香川は健診は胃がん、肺がんなど5種類あるうちの一部しかしていなかった。
~がん克服~
国立がんセンター中央病院が設置
がん治療で外見(アピアランス)の変化に悩む患者支援のため、国立がんセンター中央病院(東京都中央区)に「アピアランス支援センター」が設置されている。
「アピアランス」の支援内容を、臨床心理士の野澤桂子支援センター長に尋ねた。と
野澤:医療や心理的な事も含め、外見に対する様々な事に対応しています。全てのがんの5年生存率は6割となり、仕事をつづけながら治療をしている患者さんは32万人以上います。がん治療での抗がん剤による脱毛や皮膚のただれ等、外見の変化が生じ、副作用の苦痛度が高いことが分かっています。
また、外来での治療が増え、治療中に人と会う機会が多くなるため、外見の変化が気にかかってきます。支援の目的は、「患者と社会をつなぐケァ」です。患者の多くは外見の変化で人間関係まで変化したりして、今までの自分でいられなくなるのではと、不安になつたりします。美容的な美しさでなく、人間関係の中でその人らしくいられることを目指しています。特に10~20代は、身体の変化に大きな苦痛を感じやすい。そのため、外見変化への対処法を患者に伝えるプログラムを週2回開くほか、男性限定や個別の相談も実施しています。化粧やスキンケァなどの科学的な根拠についても研究しています。
~がん克服~
塩谷彰浩(しおたに あきひろ)先生
防衛医科大学耳鼻咽喉科教授
1962年 東京生まれ。
1987年 慶應大学医学部卒業、同大耳鼻咽喉科入局。
1993年 同大 助手。
1995年 米国ジョーンズ・ホプキンス大学医学部留学。
2000年 慶應大学医学部耳鼻咽喉科専任講師。
2005年 同 助教授
2006年 防衛医科大学耳鼻咽喉科教授。
2007年 同病院院長補佐兼務。
年間執刀数
喉頭がん39例、下咽頭がん14例、中咽頭がん4例、舌口腔がん11例、鼻副鼻腔がん3例、唾液腺腫瘍(耳下腺・顎下腺)24例、甲状腺腫瘍15例(現施設に異動後の1年間のみ)。
累積手術数(最近6年間)
喉頭がん582例、咽頭がん179例、その他頭頸部腫瘍101例。
科の特色
当科は開設以来、耳鼻咽喉科領域の中でも、頭頸部がん、咽喉頭疾患を得意としており、インフォームド・コンセントに基づいて、抗がん剤併用放射線治療と機能温存手術の両者を用いて、極力、機能や形態を温存する治療に力を入れている。
治療成績
喉頭がんに対する喉頭温存手術は当科に特徴的な治療法があり、がんの進展範囲に応じて、様々な種類の手術が施術可能である。従来、喉頭全摘術を行っていたような症例に対しても喉頭亜全摘術を施行し、喉頭機能を温存している。経験症例数は全国でも有数であり、喉頭全摘術に劣らない制御率を誇っている。また、当科で開発した新しい術式である内視鏡的後頭部切除術は、気管切開や頸部皮膚の切開をせずに、喉頭機能温存を達成でき、成績も良好である。これらの術式は放射線治療後の再発例に対しても積極的に行っている。
名医の条件
確実な技術と知識を持ち、医学的にも人間的にも経験が豊富であること。
~がん克服~
佐藤泰則(さとう やすのり)先生
防衛医科大学 歯科口腔外科教授・部長
1949年 神奈川県生まれ。桐朋高校卒。
1975年 新潟大学歯学部卒業。
1975年 埼玉医科大学口腔外科学講座助手。講師。
1985年 防衛医科大学講師、助教授。
2000年 同 教授。防衛医科大学病院歯科口腔外科部長。
実績(7年間)
舌癌76例、下顎歯肉がん25例、上顎歯肉がん18例、口底がん11例、口蓋がん他11例、唾液腺がん18例
年間執刀数(3年間・新鮮例のみ、再発含まず)
舌癌11例、下顎がん4例、上顎歯肉がん3例、口底がん2例、頬粘膜がん2例、唾液腺がん4例。
診察に際して心がける点
①常に、もし自分が患者さんの立場であったらと思って診察する。
②不要な不安を与えないように説明を行う
手術に際して心がける点
①輸血を出来る限りしないように出血を出来るだけ抑える。
②顎口腔機能の温存された手術を行う。
科の特色
近年では口腔がんの治療も、治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどを患者さんに十分説明し、価値観などを考慮して患者さん自身が最終的な治療を決定する時代になった。医療の進歩とともに口腔がんの治療も多様化し、施設により治療方法が異なることは珍しくない。当科では、口腔がん症例をたくさん扱っており、良好な治療実績を上げてきている。集学的治療を行い、常に症例各々に適切な治療法を検討し、QOLを重視して治療を行っている。十分なインフォームド・コンセントを行い、最終的には患者さんの意思を尊重した治療内容としている。
名医の条件とは
①医療技術が優れていること。
②最新の知識を持っていること。
③的確な診断・治療を早期に行えること。
~がん克服~
山本順司(やまもと じゅんじ)先生
防衛医大外科学講座第3教授
1956年 10月5日宮崎県延岡市生まれ
1975年 ラサール学園高等学校卒業
1981年 東京大学医学部卒業
1985年 東京大学医学部第一外科入局
1989年 国立がんセンター中央病院外科
2001年 がん研有明病院消化器外科医長
2002年 同 副部長
2008年 4月防衛医科大学外科学講座第3教授
医師としての手腕と素晴らしい人間性を備えた名医
診察に際して心がける点 正直に分かりやすく説明する。
手術に際して心がける点 丁寧で出血が少なく、正確な手技。
科の特色:切除不能とされるがんにも適応
当院肝胆膵外科は少ない人数で(スタッフ2人)多くの症例を扱うため1人あたりの手術症例が多く、また手術はほとんど固定されたメンバーで行なわれるため、手技が均一で安定している。術者の経験症例数は肝切除1000例以上、膵頭十二指腸切除400例以上である。出血量(中央値)は通常の肝切除術で600g、膵がんにたいする膵頭十二指腸切除術では700gである。特に積極的に取り組んでいるのは、①解剖学問題で通常は切除不能とされることがある肝門部胆管がん、②難治がんの代表であるすい臓がん、③通常では切除対象としない多発肝転移症例(特に大腸がん)である。
科の症例数・治療・成績
09年からの3年間の症例数は、肝切除09年49例、10年54例、11年60例と増加している。悪性度の高い通常型すい臓がんの切除数も、18例、20例、26例と増加。胆管がんでは特に、中部から上部・肝門部胆管症例の増加傾向が顕著である(3例、3例、10例)。胆道・膵のの悪性腫瘍に対しては、血管合併を伴う手術や肝膵頭十二指腸切除術を積極的に行っていて、高度な切除・再建技術に裏付けされた手術の安全性は高い(死亡率0%)。
名医の条件とは
患者と自分に正直であること。
~がん克服~
「左」なら生存期間が長い・日米研究でー
大腸がんの場合、患者の左側に出来たがんは、右側に出来たがんよりも生存率が長いとの研究結果が、日米で出ている。米国では、これまでの研究で最大規模となる1000人を対象に左右さを調べ、抗がん剤の効き方も左右で異なることが判明した。今後は、がんの位置によって治療の選択や治療法を開発することに役立つ可能性がある。
カルフォルニァ大学などの研究チームは、手術できない患者を対象にした抗がん剤の臨床試験のデーターを使い、がんが右側に出来た患者293人と左側に出来た患者732人を比較検討した結果、平均的生存期間は左側が33,3ヶ月、右側が19,4ヶ月と、左側が長いことがわかった。
日本では、昭和大学横浜し北部病院の砂川優腫瘍科講師らが、大腸がん患者110人を解析した結果、左側に出来た患者の生存率は36,2ヶ月、右側に出来た患者は12,6ヶ月と左側に出来た患者の生存率は2年あまり長かった。
砂川講師によると、大腸の左右で器官が作られる過程が異なり、発がんに関わる遺伝子も違いがあると言いう。左右で一定の特徴が判明すれば、治療の時意識する情報の一つになるだろうと話す。
病気の正しい知識・命の大切さ学ぶ
7月中旬、京都府精華町立精華小学校で6年生105人を対象に、府のがん教育「命のがん教育推進プロジェクト」が行われた。府の職員で京都府立医大の楳村(うめむら)敦詞医師が児童たちに語りかけた。「日本人は2人に1人ががんになると言われています。怖いとも言えるけど、身近で身近な病気ですよ。」イラストを使いながら、がんは体のさまざまな部位に発症すること、禁煙や規則正しい生活習慣を身に着ける事ががん予防のつながるなど、丁寧にやさしく話した。
さらに、「それでも100%防ぐことはむずかしいんですよ」と話すと、児童たちは不安な表情を浮かべた。「でも、検診で早くがんが見つかれば治療で完治することもあります。家族や大切な人に、《検診は大事だよ》と伝えてあげて」と呼びかけた。
続いて、胃がんの体験者(元中学教師井上文雄さん=66歳)が、患者の立場から体験談を語り、「がんを体験し、私は命を大切にしたいと思いました。みんなも命を大切にして下さい」と語った。
来年度、全国で実施
「がん対策推進基本計画」には「がん教育」推進の検討と実施が盛り込まれている。これにより、がん教育は17年度から全国の学校で実施されることになっている。文部科学省の検討会が15年3月に出した報告書では「がんについて正しく理解できる」「健康と命の大切さを考えることが出来る」ことを目標としている。具体的な教育内容は①がんの要因と経過②予防③早期発見・検診④治療法⑤患者に対する理解・・など。
神奈川県では、14年度から実施
来年度からの実施に向け、文部科学省は14年度から全国でモデル事業を始め、今年度は26都道府県・政令都市が取り組んでいる。4月には授業教材も作成された。
神奈川県では、14年度からモデル事業としてがん教育を実施している。県が、教材の作成や教員への講習会開催などを行い現場の負担軽減を図り、がん教育が継続的に行える環境作りに取り組んでいる。