早期食道がん患者を追跡調査
京都大学の武藤学教授らの研究チームが、早期食道がん患者330人の追跡調査による研究結果を発表した。その結果「早期の食道がんは禁酒すれば、再発の割合が半分に抑制される」と位置付けられた。論文は、米国消化器学会誌に掲載された。予防と、治療後の生活指導に役立つとされる。
チームは、国内で内視鏡治療を受けた早期食道がんがんじゃ330人(平均年齢66歳)について、全国16施設で最長80ヶ月間の追跡調査をし、患者の食道内を半年毎に内視鏡検査とアンケートを実施。
結果、食道がんの予兆とされる「異型上皮(前がん病変)」の発生程度には、飲酒などが関連している事が判明した。また、禁酒している患者は飲酒している患者に比べ、別の部位に食道がんのが発生する程度が53%抑制され、特に異型上皮が食道内で多発している患者の場合、77%の抑制がみられたという。
~がん克服~
ゲノム医療促進も議論対象
国のがん対策の進め方は?
国のがん対策を総合的かつ計画的に進めることを目的にした「がん対策基本法」をうけ、政府が策定する「がん対策推進基本計画」にそって進められている。現在は、2012年~16年度を対象とした第2期基本計画に基づいて実施されている。都道府県も、国の計画に基づき計画策定が義務付けされている。
第2期計画の内容は?
がんの教育・普及啓発の他、①がんになっても安心して暮らせる社会の構築②がんと診断された時からの緩和ケァの推進③働く世代や小児がんへの対応④がん患者の就労を含めた社会的な問題に対する対応・・などを盛り込んでいる。国は、計画の具体化に向けて予算を組み、施策を進めている。
基本計画はどのように作られている?
患者代表・医療従事者・学識経験者など20人で構成する厚生省の「がん対策推協議会」の意見を聞き作られる。がん対策推進協議会は、基本計画の進捗状況を確認し、少なくとも5年ごとに見直しを行う。現在は、17年度から5年間の次期基本計画について検討しており、希少がんや難治性がん、小児がんの対策の他、がんのゲノム医療などについても議論が行われている。今年末に骨子案、来年3月に基本計画をまとめる予定。来年6月の閣議決定を目指している。
~がん克服~
森 武生(もり たけお)先生
がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
1944年 東京生まれ
1971年 東京大学医学部卒業 同年関東逓信病院外科入局
1975年 都立駒込病院外科
1995年 同 病院外科部長
2000年 同 病院副院長
2003年 同 病院院長
2008年 現職
機能温存手術で世界トップクラスの実績
生涯手術数5000例以上、大腸がん2500例
大腸がんの手術は過去、男性機能を失い、女性は尿漏れを起こす性質の悪いがんであったが、こんながん手術を変えたのが森先生の機能温存手術だ。
なかでも、大腸がんに対しては人工肛門を造らない「肛門機能温存手術」や排尿機能と性機能を失わない為の「神経温存手術」を最も得意としている。
大腸がんの手術における日本の第一人者であるが、森先生は単なる「権威者」と異なるのは、60歳を過ぎてからも手術室に入り自ら執刀を続けている事で証明される。
また、手術後のQOLを可能な限り高くする「森式」という手術の普及のため、後進の指導を常に行い、弟子は世界中に散らばって活躍している。
自戒の言葉
森先生は、大腸がんの手術数に於いては他の追随を許さず、日本一であり、がんを取り除いた部位への局所再発率3,6%という治療成績は世界一であり、術後の5年生存率も世界トップくらすだ。そんな森先生は、外科医として「がんに対する闘争心」と「平常心の兼ね合い」を自戒の言葉として後進の指導をされている。
~がん克服~
転移がんも消滅
がん細胞を、免疫の攻撃から守っている仕組みを壊滅させ、がんを治す動物実験に成功したと、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らのチームが、17日付の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンに発表した。1ヶ所のがんを治療すれば、遠くに転移したがんも消滅する効果があることが確認された。「全身のがんを容易に治療できる可能性がある。」そうだ。3年程度で治験(臨床試験)を始めたいと話す。
マウスのがん光治療実験で検証
がんが生体で増殖し続けるのは、がんの周りに「制御性T細胞」という細胞が集まり、誰でもが持っていて、異物に対し攻撃する免疫細胞の活動を阻止して守っているためだ。
チームは、制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、特定の波長の近赤外線を当てると化学反応を起こす化学物質を付け、肺がん・大腸がん甲状腺がんをそれぞれ発症させた70匹のマウスに注射し、体外から近赤外線を当てた結果、約1日で全てのマウスのがんが消えた。光をあてた約10分後には制御性T細胞が大幅に減り、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れ、がんへの攻撃が始まったためとみられる。
副作用の心配もなし
さらに、1匹のマウスに同じ種類のがんを同時に4か所発症させ、そのうちの1ヶ所に光を当てたところ、全てのがんが消えたという。光を当てた場所でがんへの攻撃力を得た琳派球が血液に乗って全身を巡り、がんを消滅させたと考えられる。
身体の中の免疫機能が活発化すると、自らの組織や臓器を攻撃する「自己免疫反応」が起きて障害が出る場合が在る。肺がんなどの治療に使われる免疫の仕組みを利用した最近のがん治療薬では、自己免疫反応による副作用が報告されている。研究チームが、異なる種類のがんを発症させたマウスで実験した結果、光を当てた場所のがんだけが小さくなり、他の臓器にも影響を与えなかった。
今回の方法は、光を当てた場所のがんを攻撃するリンパ球のブレーキがだけがはずれ、他の組織や臓器は攻撃しないことが確認された。
小林主任研究員は「転移があっても効果的に治療ができる方法になる」と、期待して話す.
制御性T細胞
生体内に侵入したウイルスなどの異物を排除する「免疫反応」を調整する細胞。免疫が働き過ぎない様に、抑える役割を担っている。この細胞が機能しないと、自らの細胞や組織を異物とみなして攻撃する関節リュウマチや1型糖尿病などを発症する。坂口志文・大阪大学特任教授が発見し、ノーベル賞の登竜門とされるガードナー国際賞などを受賞している。
~がん克服~
微小がんもくっきりと
量子科学研究開発機構(千葉市)とナノ医療イノベーションセンタ(川崎市)、東京工業大学などのグループが、微小がんの構造を磁気共鳴画像化装置(MRI)で映し出す新しい造影剤の開発に成功した。
がん細胞を移植したマウスに造影剤を静脈注射で投与した実験では、約30分後にがん全体がMRIに映り、時間経過とともにがん組織の中心部までマンガンが取り込まれた。また、肝臓に転移した直径1.5㍉の微小がんも検出できた。
人で実用化されれば、がんの早期発見や転移の有無の確認、治療効果の判定などへの応用が期待されると言う。
開発機構の説明によると、「ナノマシン造影剤」と名付けたこの造影剤は、ごく微小のものを扱う技術「ナノテクノロジー」を使って作られた。直径は60~70ナノメートル(ナノは10億分の1)。がん組織に取り込まれると、壊れてMRIで映るマンガンを放出する。マンガンは、がん組織と結合しくっきりと映し出される仕組みのなっているという。
~がん克服~