がん克服【がんを守る細胞を破壊】米医学誌に発表
- 2016年08月19日
- がんニュース
転移がんも消滅
がん細胞を、免疫の攻撃から守っている仕組みを壊滅させ、がんを治す動物実験に成功したと、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らのチームが、17日付の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンに発表した。1ヶ所のがんを治療すれば、遠くに転移したがんも消滅する効果があることが確認された。「全身のがんを容易に治療できる可能性がある。」そうだ。3年程度で治験(臨床試験)を始めたいと話す。
マウスのがん光治療実験で検証
がんが生体で増殖し続けるのは、がんの周りに「制御性T細胞」という細胞が集まり、誰でもが持っていて、異物に対し攻撃する免疫細胞の活動を阻止して守っているためだ。
チームは、制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、特定の波長の近赤外線を当てると化学反応を起こす化学物質を付け、肺がん・大腸がん甲状腺がんをそれぞれ発症させた70匹のマウスに注射し、体外から近赤外線を当てた結果、約1日で全てのマウスのがんが消えた。光をあてた約10分後には制御性T細胞が大幅に減り、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れ、がんへの攻撃が始まったためとみられる。
副作用の心配もなし
さらに、1匹のマウスに同じ種類のがんを同時に4か所発症させ、そのうちの1ヶ所に光を当てたところ、全てのがんが消えたという。光を当てた場所でがんへの攻撃力を得た琳派球が血液に乗って全身を巡り、がんを消滅させたと考えられる。
身体の中の免疫機能が活発化すると、自らの組織や臓器を攻撃する「自己免疫反応」が起きて障害が出る場合が在る。肺がんなどの治療に使われる免疫の仕組みを利用した最近のがん治療薬では、自己免疫反応による副作用が報告されている。研究チームが、異なる種類のがんを発症させたマウスで実験した結果、光を当てた場所のがんだけが小さくなり、他の臓器にも影響を与えなかった。
今回の方法は、光を当てた場所のがんを攻撃するリンパ球のブレーキがだけがはずれ、他の組織や臓器は攻撃しないことが確認された。
小林主任研究員は「転移があっても効果的に治療ができる方法になる」と、期待して話す.
制御性T細胞
生体内に侵入したウイルスなどの異物を排除する「免疫反応」を調整する細胞。免疫が働き過ぎない様に、抑える役割を担っている。この細胞が機能しないと、自らの細胞や組織を異物とみなして攻撃する関節リュウマチや1型糖尿病などを発症する。坂口志文・大阪大学特任教授が発見し、ノーベル賞の登竜門とされるガードナー国際賞などを受賞している。
~がん克服~
コメントを残す