がん克服 【女性に多い甲状腺がん】 毎日新聞2015年10月17日朝刊より
- 2015年10月17日
- がんニュース
甲状腺がんは女性に多いがんだ。がんの中では手術後の生存率は高い方だが、実際に見つかれば、たとえ小さな腫瘍でも不安になる。どう対処すれば基本的なことを知っておきたい。
人間ドックで発見
東京都渋谷区の女性は7年前、人間ドックの接触とエコー検査で甲状腺の腫瘍が見つかった。甲状腺専門の病院を紹介され、腫瘍に針を刺して行う細胞診検査で大きさ1.5cmのがんと診断された。全身麻酔で首の一部を切開し、がんの部位を除去した。1週間の入院の後、1週間の自宅療養を経て職場復帰した。
女性は「がんと聞いて最初はショックだったが、がんの進行がきわめてゆっくりの為、手術で治りやすいと言われ安心した。切除部分が小さく、片側の甲状腺が残っているため、ホルモンの不足はない。今は半年ごとに血液検査や超音波検査を受け、様子を見ている」と話した。バイエル薬品が昨年10月、甲状腺がん患者565人に尋ねたところ、治療を受けるきっかけで最も多かったのは「人間ドックなどの健康診断」(約36%)だった。自覚症状としては「首にしこりがある」「のどに痛みがある」「物を飲みこむときに違和感があった」「声がかすれたり、出にくくなった」などが多かった.
体の新陳代謝を調節する
甲状腺はのど仏の下にあり、チョウが羽を広げたような形をしている。甲状腺ホルモンを分泌し、体の新陳代謝を調節する重要な役割を果たす。甲状腺がんはこの甲状腺にできる腫瘍。女性に多く40~60代でかかりやすい。国立がん研究センターによると、毎年約13000人がかかり、約1700人が死亡している。甲状腺がんにはいくつかの種類があるが、約9割を占めるのが乳頭がん。進行は遅く、首のリンパ節に転移しやすいが、肺などへの転移は少ない。
微小は経過観察も
特徴的なのは超音波検査の進歩と普及によって、小さながんが見つかりやすくなったことだ。がんと言っても、1cm以下の微小がんの場合は、すぐに手術せず経過観察する選択肢もある。微小がんは発見されなければ、小さいまま転移も無く一生無害に経過するタイプもあるからだ。甲状腺がんの治療で知られる筒井英光・東京医科大教授(甲状腺外科)は「微小がんが、そのままの大きさでとどまるか、2~3cmと大きくなるのかは、見つかった時点ではわからない。一般に急に大きくなることはないので、半年に一回超音波検査で様子を見ながら、明らかに大きくなったり、1cmをこえたりしたら、その時手術をしても遅くはない」と話す。
経過観察は不安という患者もいるが、きちんと検査を受けて売れば、1cm以下で手術しても、1cmを超えてから手術しても予後に差はないという。乳頭がんの場合、手術を受けた患者の10年生存率は90%以上と高い。ただし、大きさが1cm以下でも、気管や神経に近い場所にあるものや、あきらかにリンパ節転移のあるものは手術が必要だ。
専門医の診断重要 経験豊富な専門医を
都道府県別に実名で紹介
重要なのは甲状腺がんに詳しい、専門医に診てもらうことだ。日本内分泌外科学会と日本甲状腺外科学会は、手術経験の豊富な専門医制度を共同で設け、ホームページで都道府県別に実名で紹介している。筒井教授は「最近は、甲状腺がんに効果のある分子標的薬も登場しており、医師に必要な専門知識も大きく変化している」と、専門医への受診を勧めている。
~がん克服のために~