毎日新聞 5月24日 朝刊 柏市支援の冊子・相談機関や制度紹介
柏市(千葉県)は、がん患者やその家族の悩みや不安などを解消するため、さまざまな事柄に関しての相談機関や支援制度などを網羅的に紹介した冊子「がんサポートハンドブック」を5500部作成した。
同市内には、がん診療連携拠点病院が2ヶ所あり、市立図書館本館にがん緩和ケアに関する本を集めた「緩和ケアを知る100冊コーナー」を設置するなど、市は「がんになっても安心して暮らせる街づくり」を重点的に実施してきた。今回の冊子作製も、こうしたがん対策の一環として、先進権と言われる沖縄県の事例を参考に作製した。
内容は、市役所の検診などの相談窓口のほか、つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅近くにあり、専門家に気楽に相談できる「がん患者・家族総合支援センター」を紹介しているほか、経済的な負担を軽減するための高額療養費制度や傷病手当金の公的助成・支援の仕組みを解説。在宅療養時の買い物などの支援サービスや通院・入院の際の子育てサポート、身近な人を亡くした際の大きな悲嘆(グリーフ)を感じている人に対するケァなどの支援も掲載している。
冊子は、拠点病院の医師や医療相談院などが、患者や家族の相談に応じて配布し、一般病院でも入手できらようにした。市福祉活動推進課は「病気自体だけでなく、医療費、介護などがんに関する悩みはさまざま。冊子では、それぞれの悩みに応じてどこに相談すれば良いかが、ある程度は分かるので、活用してほしい」と話している。
問い合わせは同課℡04-7167-2318 がん克服へ
毎日新聞 5月21日 朝刊 中川恵一・東京大学附属病院准教授、緩和ケア診療部長
日本人のがんのおよそ半分は、暮らしの中で「避けることができる」ものです。
国立がんセンター予防研究部が昨年10月に発表したデーターによると、日本では男性のがんのおおよそ55%(がん発生原因の53%・がん死亡原因の57%)は予防可能のリスクが原因のものでした。女性でも、未然に防げるがんは全体の30%近く(がん発生原因の28%・がん死亡原因の30%)を占めました。
日本人全体で見ると、喫煙と感染症がそれぞれがんの原因の20%前後を占め、肥満や野菜・果物の摂取量に比べずば抜けて大きなリスク要因となっています。
感染症の原因では、胃がんの原因の大半を占めるピロリ菌、肝臓がんの原因の約8割を占める肝炎ウイルス、子宮頸がんの原因のヒトパピローマウイルスなどが主なものです。欧米では、感染症は、がんの原因の5%程度ですから、発ガンの原因という点では、日本人のがんはまだ「途上国型」と言えるでしょう。これは、多くのがんが、発見できる大きさになるまで20年以上かかる為で、現在発症しているがんは、過去の社会の姿を反映しているものだからです。
がんの原因のトップは、男性は喫煙ですが、女性は感染症です。男女とも、感染が原因となる発がんは2割前後ですから、男性にがんが多い(死亡数は女性の1.5倍)のは、男女の喫煙率の差(男性3割強、女性約1割)によるところが大きいといえます。
先進国ではまだ高い日本男性の喫煙率ですが、近年、大幅に低下しつつあります。日本たばこ産業がまとめた昨年の全国たばこ喫煙調査によると、成人男子の喫煙率は36.0%でした。1966年の87,3%から47.7ポイントも減ったことになります。年代別では、60歳以上は23.9%で、66年当時より50%以上も減っています。
喫煙率の低下よ歩調を合わせるように、冷蔵庫や家庭の風呂の普及、輸血用血液からの肝炎ウイルスの除去などが進み、感染症も大きく減りつつあります。今後数年で、がんの罹患率は徐々に減少に向うと考えています。
ーがん克服ー
2012年5月3日 毎日新聞(朝刊)
上田 あい子さん(37)
NPO「ウイッグリング・ジャパン」代表 福岡市在住。民放テレビ局を退職後、映像製作会社を起業。
「貸すのはかつらですが、がんと闘う勇気を届けたい」
抗がん剤の治療で脱毛に悩む女性を支援しょうと、2010年春から、福岡市を拠点に「ウイッグイング・ジャパン」の活動を始めた。元患者が提供してくれたかつらを、同市のウイッグサロンを通して貸している。同会への入会が必要だが、貸し出しは無料。利用者は全国300人に上り、5月26日には初の出張サロンを東京で開く。
きっかけは、幼なじみの乳がん発症だった。おしゃれで社交的だったのに「髪も抜けるって・・」と落ち込んでいた。何かできることはないかと、がんを克服した知人に相談した。知人のタンスに眠っていたかつらを借りて届けた。「かつらのお下がりは嫌がるかと不安だったけど、がんと闘った人の存在もかんじてくれたみたいで・・」と、前向きになったことを聞いた。
かつらは10万円前後する。経済的負担を軽減するねらいもある。活動を始めた当初、元患者から「何をたくらんでいるの?」と誤解もされた。「『結局あなたはがんじゃない』って言われたり。けど、そこで縮こまっても始まらないですよね」と微笑む。今では、医療機関や患者グループが、活動を紹介してくれるようになった。
「患者さんたちの輪に私が温められている。この輪に、一人でも多くが救われたら」
ーがん克服ー
2012年4月11日(毎日新聞) ガンセンター5万人調査 閉経後の女性3、8倍
閉経後にほぼ毎日海藻を食べる女性は、週2日以下しか食べない女性と比べ、甲状腺がんの一種の乳頭がんになるリスクが3,8倍になるとの研究成果を国立ガンセンターなどが11日、発表した。欧州のがん専門誌に掲載された。
海藻に含まれるヨウ素は、生命維持に欠かせないミネラルだが、取りすぎると甲状腺がんの原因になる可能性が報告されている。
研究チームは、9府県の40~69歳の女性約5万人を対象に90年代から約14年間、追跡調査した。この間、134人が甲状腺がんになり、うち乳頭がんが131人だった。
海藻を食べる頻度を▽週2回以下▽週3~4日▽ほぼ毎日・・の3グループに分け、甲状腺がんの発生率を比べた。 その結果、海藻をほぼ毎日食べる女性が乳頭がんになるリスクは、週2回以下の女性と比べると3,81倍で、週3~4日でも約2倍となった。一方、閉経前の女性は海藻を頻繁に食べてもリスクは増えなかった。
研究チームの国立環境研究所の道川武紘研究員(公衆衛生・免疫学)は、「閉経後にリスクが高まるのは、女性ホルモンの濃度の変化などが関係していると考えられ、今後さらに研究を進めたい。海藻を必要以上摂取しないよう気をつけた方がいい」と話している。
中川恵一・東京大学付属病院准教授(緩和ケア診療部長)のお話。-毎日新聞―
子宮頸がんは、乳がんと並んで若い女性のがんの代表です。その原因のほぼ100%が、
性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。
このウイルスは、8割近くの女性が感染経験を持つ、ありふれたものです。感染しても、
がんに繋がる確立はごくわずかです。しかし、逆に、性行為をするすべての女性に子宮頸
がんのリスクがあるともいえます。
そのHPVへの感染を予防するワクチンが開発され、昨年ようやく認可されました。
ウイルスに感染する前の10代前半の女性に接種するのが一番効果的ですが、成人女性
でも有効とされています。ワクチンによって子宮頸がんのリスクは3~4割まで下げられ
ると考えられています。このワクチンに加えてがん検診を行えば、子宮頸がんで命を落と
す事はまずなくなります。かって、天然痘が撲滅されたように、子宮頸がんは防げる病気
になったのです。
しかし、日本は残念ながら子宮頸がんの予防でも、欧米に遅れとっています。子宮頸がん
の受診率が欧米では8割と高いのに日本は2割程度にとどまっています。
HPV予防ワクチンも、欧米では公費負担で12歳前後の女子に接種するのが常識です。
たとえば、オーストラリアでは12歳と13歳の全ての女子を対象に、学校で接種が実施
されています。全額公費負担で、個人負担はありません。イギリスなども同様です。
学校でがん教育をきちんとしたうえで、10代前半の接種を進める必要があります。
2012年3月9日(毎日新聞) 国内で2例!がん患者が凍結卵子で妊娠
がんの未婚女性が治療前に卵子を凍結し、治癒後に結婚して体外受精を行い、妊娠したケースが国内で2例あったことが8日、分かった。内1例は昨年出産していた。がん患者の卵子凍結による妊娠例は国内で始めてという。
加藤レディスクリニック(東京)によると、07年3月に悪性リンパ腫の未婚女性(当時30歳)が、治癒後の出産を希望し、卵子7個を採集して凍結保存した。半年後にがんが治り、10年5月に結婚したが、卵管の障害で自然妊娠しなかった。そのため11年8月、凍結していた卵子3個で体外受精。2個が受精し、うち一つを凍結させ、今年1月に子宮に戻し、妊娠した。
また、藤野婦人科クリニック(大阪)によると、白血病の未婚の女性が治療後に、凍結卵子で妊娠、昨年出産した。
同日記者会見した加藤レディスクリニックの竹原祐志副院長は「がんの患者さんが、家族を持つことを治療の励みにしてくれればうれしい」と話している。
2012年3月5日(毎日新聞夕刊) がんリスク4割減 がんセンター「1つでも実践を」
禁煙や塩分控えめの食事など五つの生活習慣を実践すると、がんのリスクが4割程減少するという研究結果を国立がん研究センター(東京都中央区)がまとめ、5日発表した。五つの習慣のうち一つでも多く実践するほどリスクは減少していくという。オランダの医学誌に掲載された。
90年代後半に45~75歳だった7万8548人(男性3万6964人、女性4万1584人)を06年まで追跡し、がんのリスクを下げると言われている五つの生活習慣とがんの発生率との関係を調べた。
その結果、①禁煙 ②節酒(1日日本酒い合以下を週6日以内)③塩分控えめな食事(タラコ1腹を月1回程度)④活発な運動(1日に男性でスポーツ1時間以上、女性で立ったり歩いたりを3時間以上)⑤適正な体重(体格指数=BMI=が男性で21~27、女性で19~25)の五つの生活習慣のうち、二つを実践しているグループは、ゼロまたは一つだけ実践しているグループに比べ、がんのリスクが男女とも14%低下し、五つすべてを実践すると、男性で43%、女性で37%低下することが分かった。
調査結果を分析した同センターの笹月静予防研究部室長は「いまより一つでも生活習慣を変えられれば、がんのリスクは確実に低下する。生活を見直すきっかけにしてほしい」と話している。
2012年3月2日(毎日新聞)掲載 厚労省推進協「40~69歳検診50%目標」
厚生労働省のがん対策推進協議会(会長、門田守人・癌研有明病院長)は1日、12年度から5年間の次期がん対策基本計画の同省案を了承し、計画案がまとまった。働く世代や小児へのがん対策を充実させ、がんになっても安心してくらせる社会づくりを掲げた。働く世代のがんの早期発見に向け、40~69歳のがん検診受診率を」5年以内に50%に向上させることも明記。
成人喫煙率を10年間で約4割減の12%に引き下げるなど、たばこに関する数値目標を初めて盛り込んだ。計画案はパブリックコメント(意見公募)を経て、5~6月に閣議決定する予定。次期計画案は、現計画が07年度から10年間の全体目標にかかげた「75歳未満のがん死亡率20%減少」や「患者、家族の苦痛軽減と療養生活の質の維持向上」のほかに、患者や家族が抱える仕事への不安などに着目し「安心できる社会の構築」を加えた。がん検診の受診率50%の目標は、死亡率が上昇している乳がんと子宮頸がん(20~69歳)が該当。胃、肺、大腸のがんは当面、40%を目指す。
成人喫煙率の目標値は、禁煙したい人が全員禁煙する前提で算出した。受動喫煙の機会は、飲食店と家庭で22年度までにそれぞれ15%、3%と半減し、行政、医療機関は0%にする。小児がんについても、5年以内に拠点病院を整備。医薬品や医療機器の早期開発や、承認の迅速化も盛り込んだ。
がん専門医が患者の幅広い悩みに耳を傾ける運動「がん哲学外来」の実践を全国の医療現場に生かそうと、「がん哲学外来市民学会」が設立された。
日本人の2人に1人が罹る「がん」に、患者も医師も「一市民」として向き合う取り組みが本格化する。
「がん哲学外来」は08年、樋野興夫・順天堂大教授(病理・腫瘍学)が提唱した。誰もが直面するがんや死と向き合い、生き方を見つけようとする姿勢を「がん哲 学」と命名。治療だけではなく生活や仕事の悩みにも耳を傾ける患者相談を病院外で始めたところ、共感を得て全国に広がった。市民学会の会員は、がん患者や その家族、医師ら医療関係者が対象。代表には樋野さんが就き、顧問は垣添忠生・元国立がんセンター総長、柏木哲夫・金城学院大学長、門田守人・がん研有明 病院長の3人。がん哲学外来でさまざまな相談に対応するコーディネーターに認定書も発行する。
事務局は長野県佐久市におく。「医療の民主化」を提唱した故・若月俊一氏の拠点だった佐久総合病院があり、「医師と市民の壁を崩す取り組みにつなげたい」との願いを込めた。
「関心を持つあらゆる人が、立場を超えて集い、市民の立場からの医療を目指したい」樋野さんは語る。
がん哲学市民学会では、2011年12月17,18日に「第一回がん哲学外来コーディネーター養成講座」が開催され、「佐久宣言」が採択されました。
第二回養成講座、佐久宣言等に付きましては事務局にお問い合わせ下さい。
「 問い合わせ事務局 」
長野県佐久市前山321-3(ケアハウス佐久内)
TEL 0267-63-5369
FAX 0267-63-5389
e-mail kenkokobo@hp1.jp
2010年12月7日(毎日新聞) 地域がん登録12年度から開始
東京都は、がんの予防や治療に役立てるため、都内のがん患者の情報を収集する「地域がん登録」を、12年度から始める方針を固めた。既に38道府県で実施されているが、都は人口約1300万人で全人口の1割を占めており、がん対策の推進に寄与しそうだ。
都内では、がんで年間約3万人が死亡。当面はその1,5倍に相当する4万6千人ぶんの登録件数を目標にする。
地域がん登録は、がん対策基本法の付帯決議などで国と都道府県が実施主体となって行うとされる。都内在住者ががんと診断された場合、病院を通じて氏名や住所、病名、治療法などの情報を登録。住民票を」照会して予後を追跡し、生存率を」算出する。罹患状況などとともに、データーにもとづく対策を立てるのが狙い。
厚生労働省は」04年、「がん登録は個人情報保護法の適用外」と通知しており、本人の同意は必要ない。
都健康推進課は「病院が多く、個人情報の取り扱いも難しい」と実施に消極的だったが、10年1月から検討を始め6月に都民3000人にアンケートを実施(回答2161人)し、49%が「東京でも導入が必要だ」と答え、「必要でない」の12%を上回った。