がん克服 【がん患者にかつらを無償で貸し出す】
2012年5月3日 毎日新聞(朝刊)
上田 あい子さん(37)
NPO「ウイッグリング・ジャパン」代表 福岡市在住。民放テレビ局を退職後、映像製作会社を起業。
「貸すのはかつらですが、がんと闘う勇気を届けたい」
抗がん剤の治療で脱毛に悩む女性を支援しょうと、2010年春から、福岡市を拠点に「ウイッグイング・ジャパン」の活動を始めた。元患者が提供してくれたかつらを、同市のウイッグサロンを通して貸している。同会への入会が必要だが、貸し出しは無料。利用者は全国300人に上り、5月26日には初の出張サロンを東京で開く。
きっかけは、幼なじみの乳がん発症だった。おしゃれで社交的だったのに「髪も抜けるって・・」と落ち込んでいた。何かできることはないかと、がんを克服した知人に相談した。知人のタンスに眠っていたかつらを借りて届けた。「かつらのお下がりは嫌がるかと不安だったけど、がんと闘った人の存在もかんじてくれたみたいで・・」と、前向きになったことを聞いた。
かつらは10万円前後する。経済的負担を軽減するねらいもある。活動を始めた当初、元患者から「何をたくらんでいるの?」と誤解もされた。「『結局あなたはがんじゃない』って言われたり。けど、そこで縮こまっても始まらないですよね」と微笑む。今では、医療機関や患者グループが、活動を紹介してくれるようになった。
「患者さんたちの輪に私が温められている。この輪に、一人でも多くが救われたら」
ーがん克服ー
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