がん克服【子宮頸がんワクチン接種後健康被害】


 健康被害の18歳 センター試験に挑む

 子宮頸がんワクチンの接種後、全身の痛みや脱力感などの健康被害に苦しむ白井市の園田絵理菜さんが、16日に行われた大学入試センター試験に挑んだ。車いす生活で、外出も困難のため、合格しても通学できるか不安だ。それでも、「もう一度、社会とつながりを持ちたい」と、歩もうとしている。

 最初の接種は中学3年だった2011年8月。「3年の3月までに接種すると、補助金を受けられる」という自治体からの通知を受け、近くの病院で接種した。直後から体の痛みや出血があり、通学の電車の中で失神したこともあったが原因がわからず、3度接種した。

 高校2年の冬から頭痛や関節痛が酷くなった。11以上の病院を回り、MRIなどを使った検査も受けたが常に「異常なし」。医師から「心因性のもの」と言われたこともあった。歩行障害にも苦しみ、杖をついて学校に通ったが、課題を提出できないこともあった。ある教師には「みんなが頑張ってやっているにに、貴女だけが出来ないのはおかしい」と突き放された。両親から叱られたこともある。

誰にも理解してもらえない

 体も頭も痛いけど、理解してもらえない。「死んだ方が楽」と何度も思った。成績は急カーブで落ち、卒業に必要な出席日数も足りなくなった。高校3年だった14年10月、「友達と一緒に卒業できないのなら、せめて同じ時期に卒業したい」と、中高一貫の全日制から、自宅で勉強できる通信制の高校に転校した。楽しみにしていた卒業旅行には行けなかった。

 その後、原因を知りたくてインターネットで調べ、同じ症状に苦しむ同世代の存在を知った。「国が推奨したから接種したのに。友達と楽しく過ごしていた日々をを取りかえしてほしい」。母親の小百合さん(52)は、摂取させたこと、叱ったことを悔い自分を責めた。「人生で一番いい時期なのに。治療法も確立されていない中、苦しむだけの毎日はまるでトンネルの中にいるよう」。と何度も涙した。

夢に向かってもう一度頑張る

 昨年3月に通信制の高校を卒業した。社会とのつながりを失った日々をおくる中、テレビドラマを見て中学の頃抱いた「科学捜査研究所で犯罪者プロファイリングをする」という夢を思い出した。心理学を学べる大学を目指そうと決意し、インターネットで予備校の講義を受けながら、国語、英語、日本史の3教科を勉強してきた。以前より集中力も落ち、続けて勉強できるのは1時間がやっと。体調が悪い時は机に向かうことさえできないが、大学案内を見ていると「この教授の講義を受けたい」「サークルに入りたい」と、心が弾む。

  何回も受験することが難しいため、活用する大学が多いセンター試験を受けることにした。車いすの使用や教室までの付添が認められる会場が少ないため、家から車で2時間近くかかる千葉市の千葉大を指定された。

 今でも、脱力のため一人で風呂に入れない日もある。症状悪化に対する不安も消えることがない。でも「夢があれば、社会とのつながりが持てれば、トンネルの中に一筋の光が見えるかも知れない」と母親の小百合さんは常に寄り添い、全力で支える。「学校に行けなくなった私たちに学ぶ機会を与えてほしい。やらずに後悔するより、やれるだけやる」。絵理菜さんは、そうおもっている。

国、各自治体はこの問題にどう取り組むのか

 絵理菜さん以外にも、数多くの人が健康被害に苦しむ。子宮頸がんワクチンの接種は、2010年度に国の助成事業になり、予防接種法改正で13年4月、小学6年~高校1年を対象に、接種が国民の努力義務となった。09年12月~15年に約340万人が接種を受け、2700人の副作用が国に報告されている。頭痛や筋力低下、失神、意識レベルの低下など症状は多様。厚生労働省は13年6月以降、接種を積極的に勧めることを控えている。

 国の救済制度が遅れているなか、千葉県浦安市では2015年11月から、子宮頸がんワクチン接種による副作用発症者に対し、市独自の医療支援体制を設け、通院や入院の期間に応じて治療を受けた月毎に、3万3200~3万6000円の医療費を支給するほか、医療費の自己負担分も支給している。

 国にも、予防接種法に基づく救済制度があるが支給決定の手続きが遅れている。金銭面のほか、貴重な青春時代を奪われ、後遺症に悩む若い人たちに対する補償をしっかり考えてもらいたい。

~がん克服~

 

 

 

 

 

 

 

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