がん克服 【遺伝性がん発見へ】


病院間で情報共有

がんの中には、数は少ないが遺伝子由来のものがある。そのような遺伝性のがん診療に、地域の病院が協力して取り組もうというネットワークが各地で発足している。どこでどんな検査や手術ができるかなどの情報を病院間で共有し、患者に早い段階で治療の選択肢を示すのが目的だ。

全ての人に細胞のがん化を防ぐ遺伝子が備わっている

遺伝性腫瘍の多くは、細胞のがん化を防ぐ「がん抑制遺伝子」の変異で「がん化を阻止するブレーキ」の働きが悪くなるのが原因。遺伝子性でなくても、がん抑制遺伝子の変異が重なってがんになることは少ないが、遺伝性の場合、生まれつき遺伝子の一部に変異があり、がんになるリスクが高い。これまでに乳がん、卵巣がん、大腸がんなどの遺伝性がんがみつかっている。

がんの家族歴などで判断

医師は、発症年齢の若さや親族にも発症者がいること(家族歴)などを手掛かりに遺伝性の可能性を判断する。築くのが早いほど、本人の家族に遺伝性カウンセリングや遺伝子検査、手術などを伝え、示せる選択肢が広がる。

例えば、遺伝子性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の場合、検査で遺伝子変異が分かれば、計画的検診でがんの早期発見を目指すことや、発症していない側の乳房の切除や卵巣摘出などの処置も可能になる。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、全く発症していない段階で両方の乳房と卵巣を摘出している。

最近まで遺伝子性のがんに対する関心は低かったが、各地にネットワークがが形成されている。東海地方で、複数の病院の相談業務に携わる認定遺伝子カウンセラー7の大瀬戸久美子さん(30)は「数年前のカルテを見て、最初に家族歴を聞いて遺伝子の話をしていれば、もっと良い選択肢を示せたのではないかと思った例は沢山ある」と話す。一方、「遺伝子ではないか」と思う患者がいても、全てその病院でその先の対応が出来るわけではない。

地域全体で情報を共有

東海地方では、遺伝子由来のがんに関心を持つ医師やカウンセラーらが中心となり、2013年にネットワークを完成した。現在は愛知、三重、岐阜、静岡から約20の医療機関が参加し、主にHBOCの治療で連携している。

例えば、あるがん患者が、家族歴から遺伝子性と疑われた場合、詳しい検査とカウンセリングが出来るネットワークの病院を紹介する。その後の治療はさらに別の病院ですることもある。大瀬戸さんは「地域全体で一つの病院となることを目指している」という。ネットワークの代表を務める愛知県がんセンター中央病院の岩田広治乳腺科部長は「がん全体に占める遺伝性腫瘍はそれほど多くなく、一つの病院で診断から治療まですべての体制を整えるのは合理的でない。複数の病院で情報を共有して役割を分担する方がより効率的だ」と話す。

北海道では、札幌医大や北海道がんセンターを中心に昨年から連記を開始した。メーリングリストを作り、道内外の80人の医療者がHBOCの遺伝子検査や手術に対応できる施設の情報を共有する。

吸収も、九州がんセンターが中心となって今年、約30施設がネットワークを発足させた。

遺伝子性がんの取り組みが広範囲で始まる

遺伝子性腫瘍の知識を専門外の医療者に広く伝える取り組みも始まった。7月下旬、大阪市の医学研究所北野病院で開かれたセミナーもその一つ。参加した医師から「今後必要になる知識だと実感した」との声が聞かれた。

主催者の一人だった大瀬戸さんは、「遺伝子検査やカウンセリングは特別なものではなく、日常の健診に近づいています。知らないではすまないと、危機感を持ってもらいたいです。」と話す。

~がん克服のために~

 

 

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