がん克服 【がんのつらさ】患者同士が共有


がん告知のつらさ

「がんを告知されたから家までに長い道のり、涙があふれて仕方ありませんでした。あの時、病院の中でいったん気持ちを落ち着かせる場所があれば・・・」埼玉県杉戸町で「がん患者会シャローム」を主宰する植村めぐみさん(65)の胸の奥には、今も15年前の記憶が暗く沈んでいる。

精神論は必要なし

植村さんは2000年にがんの手術を受けた。治療の副作用も重なり、難度も「死にたい」と思い、理屈でははかれない悲しみに襲われた。2006年に患者会を組織。「ただつらさを吐き出す場所が作りたかった。がん患者には精神論も根性論も必要ないのです」。

患者をサポートする場所を作りたい

さらに告知の日の辛い経験から、病院内で患者をサポートする場を作ろうと思い立つ。県疾病対策課が動いてくれたこともあり、県立がんセンターで「ピアサポート制度」を実現させた。「ピア」は仲間を意味し、ピアサポートは仲間による仲間への支援だ。がんの仲間が研修を受け、ピアサポーターとして病院などでがん患者の悩みなど聴く。植村さんは現在、同がんセンターをはじめ数か所でピアサポーターとして活躍する。「患者が求めるものは《共感》です」。カウンセリングや具体的なアドバイスをするのではなく、相談者の気持ちを整理することを心がける。

植村さんは相談者から「生きる意味が分からない」と訴えられると、「私も初めは地を這うような日々でした」と伝える。「でもあの時の苦しみがなかったら、あなたの気持ちも分からなかった。人生にとって、意味がないことはないと思います」と続ける。相談者は、「じゃあ、いまわ分からなくてもいいのですね」と、表情が明るくなるという。大事なのは、自分なりの言葉で「共感」を伝える事。ただし、がん患者にかける言葉には配慮が必要だ。(別記)植村さんが患者として、また患者会やピアサポートの活動を通じて分かったことだ。家族や友人など、周囲にがん患者がいる人も是非参考にして欲しいという。

励ますつもりが、逆に患者を傷つけかねない言葉

「頑張ってね」・・十分に頑張っていて、これ以上は頑張りようがない

「偉いね」・・上から目線で評価されていると感じる

「〇〇してあげる」・・がんになったことですでに負い目を感じている

「若いのにかわいそう」・・不幸だとすり込まれているようで、前向きな気持ちがそがれる

「切ったら治るから大丈夫」・・がんは手術後が本当の闘い。何も理解してないと感じる

「人はいつか死ぬから皆同じ」・・確かにそうだが、がん患者は日々、死を意識して生きている

患者同士でなければ分かちあえない

患者同士でなければ分かち合えないことは多い。千葉の乳がん患者会、「アイビー千葉」の代表、斎藤とし子さん(73)は「ひとりで閉じこもると、心の回復に時間がかかる。人の力を借りて元気になることも考えて」とアドバイスする。患者会に入らなくても、病院で開く集いの場になら気楽に参加できる。7年前に乳がんの手術をした同会の関口淳子さん(51)は「患者は、周囲に対して元気であることを装いたいもの。でも、同じ病気の人なら弱音を吐けると話す。「家族奈には特別扱いされたくないし、《病人だから》とやることを制限されると落ち込んでしまう。こちらは動ける範囲で動いているので、ただ見守っていて欲しいのです」。

がん患者を支えるネットワーク

妻ががん患者の場合、夫にはどのような支え方があるのだろうか。横浜市在住のカメラマン、大沼正彦(55)の妻由美子さん(53)は6年前に卵巣がんが見つかった。手術後に抗がん剤治療を受けていたが10ヶ月後に再発がわかった。以来、何度か再発を繰り返しながらも抗がん剤で治療を続ける。

「僕は病気について勉強し、妻は治療をがんばる。それぞれの役割で癌に向き合ってきました。根本的にあるのは、もちろん《死なせたくない》という気持ちです。正彦さんはフリーランスのため時間が自由になり、家事も積極的にこなす。社会人の息子(28)と娘(24)が同居し、一時「家事は家族で分担しよう」と言う事になったが、由美子さんに反対された。「私が居なくなった時を想定しているようで嫌。駄目なときは言うから、私もできることをやって家族に混ぜてほしい」

当初は、治療法に迷うなど正彦さんのストレスも大きかったが、信頼できる主治医と出会ったことで解消された。夫婦の足並みはおおむねそろっているが、たまに感情がぶつかり合うこともある。「妻の苦しみは僕に分かり得ない。でも、《妻ががんになった夫の気持ちはあなたには分からないでしょう》と妻に言ってしまうことも」と正彦さんは笑う。

由美子さんには、ブログで知り合った「がん友」も多く、さらに医療者や患者会と、夫婦を中心に「味方になってくれる」ネットワークが出来ている。卵巣がんの再発から4年半、今は「3ヶ月先は見えるが半年先は見えない」状況だ。しかし、夫婦で新薬の適用を待ちなつつ、希望を持ち続けている。

~がん克服のために~

 

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