がん克服 【告知乗り越え治療に希望】


淡々に、かつ克明に 湘南記念病院

待合室には「自由につぶやく」という表題のA4判のノートが置かれていた。湘南記念病院(神奈川県鎌倉市)の「かまくら乳がんセンター」患者が病気で押しつぶされそうな気持を、思い思いにつづっている。

「手術後、9年が経ちました。息子2人のシングルマザーで、あきらめるわけにはいかない。でも術後の抗がん剤治療で髪が抜け、先が見えずに絶望・・・。そんな時、私の思いを理解してくれた先生の言葉に大泣きしました。毎年、あと1年、あと1年、と生きています。先生に巡り合えてよかった。」

同センター長で乳腺外科医の土井貞子医師は「告知の時は【あなたのがんはこうで】と淡々と説明します」と話す。同センター独自の手帳に病理検査の結果などを克明に記し、図も示しながら「こうやって治していきましょう」と説明する。中途半端に伝えると、患者はかえって辛い思いをするという。

患者が激しく動揺した場合は看護師が外に連れ出す。「医師が全てをフォローしょうとすると無理が出る。医療スタッフからボランティアのサポートまで得意分野で力を発揮して、患者のケアにあたります」と話す。

病気を理解する

乳がんは、がんの中でも治りやすい一方、十数年経っても再発することがあり、長く付き合わなければならない。土井さん自ら母や叔母を乳がんで亡くしたことで、医師が何を求められているかを痛感し、患者や家族への対応や心構えが変わったという。

皆で温泉に 生きる力を蓄えて帰る

同センターでは定期的にカウンセリングや術後の体のケアなどを行う。また手術を受けた患者を中心に、年2回、土井さんの引率で温泉に行く。旅館を貸切、勉強会の後、術後のありのままでみんなで温泉に入る。参加者は必ずと言っていいほど生きる力を蓄えて帰るという。

土井さん:「がん患者は悲劇のヒロイン」というイメージをマスコミが作りすぎている。私は「かわいそう」という言葉は使いません。もちろん大変だけど誰でもなる病気。普通の事ととらえなければいけない。再発・転移の告知も、患者が「理解していない」と思うと、「次回は1時間取りますからゆっくり話しましよう」と話して帰ってもらう。きちんと話せば患者は必ずパニックから回復する。中には「治らないなら治療は止める」という患者さんもいるが、それは違うと思う。ただ延命するのではなく、つらいことが起こらないよう、治療することで快適な時間を長く作りましょうと、とことん説得します。

告知 悩みは心の不安

がん告知は医師にとっても重い仕事だ。国立がん研究センターの精神腫瘍医で、がん患者の心のケアについて研究する内富庸介医師は「1990年代前半は告知率が2~3割でした。2007年にがん対策基本法が施行されて以降、一気に増え、中小の病院はまだ6~7割ですが大病院はほぼ100%の状況」と話す。告知率が上がった背景はさまざまだが、患者が病を知らなければ、望ましい治療が出来なかったり、家族の間に亀裂が入ったりする可能性もある。

「がんに対する構え方も以前とは変わりました。5年生存率が6割になり、必ずしも悲観する必要はない。とはいえ腫瘍を取り除いても再発の恐怖があり、一度診断されると心への負担が大きいのです」。

告知・治療中の自殺者多数

がんと診断されて1年以内の自殺率が一般人と比べて約20倍とするデーターもある。告知で受けるストレスに加え、「治療で苦しむ」「仕事が続けられない」「家族に迷惑をかける」など将来を悲観して自殺する人も多いという。「いかに希望を持ってもらいつつ告知するか。すい臓や肺などの難治とされる患者や再発患者への告知、また治療の中止などの悪い知らせを医師がどう伝えるかが問題です。がん治療に関わる医療者を対象にセミナーも開かれているが、参加者がなかなか増えないのが現状だという。

患者さんの話に耳を傾ける

サバイバー(がん経験者)の悩みの半分以上が心の悩みです。今後サポート体制をどのように充実させるか」。先月、国会で「公認心理士法」が成立した。心理職が国家資格になることで、がん患者の心のケアの担い手としても期待される。内富さんは強調する。「主治医でも家族でもなく、ただ患者の話に耳を傾ける。そんなケアが必要とされます。

~がん克服のために~

 

 

 

 

 

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