がん克服 【乳がん全摘】無い胸を見るのに勇気


乳房を無くす悲しみ

「胸がないのを見るのは、何より勇気が必要でした」今月3日、タレント(元プロレスラー)の北斗晶さん(48)は退院後に開いた記者会見で、ひとことひとことに素直な気持ちを込めた。

北斗さんは、右胸の乳頭の真下に2㌢の腫瘍が見つかり、先月、手術を受けた。脇のリンパに転移ががあり、病期でいえば「ステージ2b]。ステージは初期の「0」から、進行性の「4」まで5段階で示される。乳がんの手術は、初期で見つかれば部分的に切除して乳房を少しでも温存できるが、全摘出が必要な場合もある。北斗さんの場合も「全摘」で、ブログにも、手術後の胸をなななか直視できないつらさがつづられていた。

女性の象徴である乳房を失う。そんな乳がん患者の悲しみは計り知れない。

慰めの言葉にも傷ついて

「体に大きな傷が残り、異形の者になりはてたという心境でした」福岡在住で仕事を持ちながら13歳を頭に4人の子育てに追われるE子さん(48歳)は2011年秋、「安心するために受けた人間ドックで右胸にステージ1の乳がんが見つかった」。「まさか自分が」。当時、末の息子はまだ1歳。授乳をしながら眠るのが何よりも幸せだった。腫瘍は小さいながら広がっていて、医師からは全摘を勧められたが、結局1/4ほどを取り除いた。その約3年後、今度は左胸に腫瘍が見つかる。「この世が終わったかのような衝撃でした」。腫瘍が乳管内にとどまっている「非しゅん巡浸潤のステージ0だったが、右と同じく広範囲に広がっていた。乳首は残せたものの、乳房のほとんどを摘出せざるを得なかった。

ステージだけ考えれば初期のがんだ。しかし周囲の人から「早く見つかってよかったね」と言われると、「見つかった時の私の気持ちが分かりますか」と問い返したくなる。良かれと思ってかけられる言葉にも、深く傷ついた。休職中、子供たちを学校に送り出して一人、家事をしていると、ふいに涙があふれる。「なにも悪いことをしていないのに私が・・・」

最初の手術から4年が経った。「がんであることをまだ受け止められん」と親しい看護師に話すと、「永遠に受け止められんかもね。そのまま行くしかない」と包み込むように言われ、「今のままでいいんだ」と少し楽になった。

乳房再建はまだ考えられない。「今度入院しても、子供4人」の面倒を見てくれる人はいません」夫(51)は「僕はオッパイと結婚したわけじゃない」。と言ってくれる。それだけが救いだ。

乳房再建

乳がん手術で失ったり変形したりした乳房を、形成外科の手術で取り戻す。おなかや背中の皮膚や脂肪などを使う「自家組織」の再建と、シリコンの人工乳房による「インプラント」の再建がある。乳がん手術の後、間をおいて行われる場合もあれば、乳がん手術に引き続いて行う「同時再建」もある。従来は、自家組織の再建のみが保険適用だったが、最近、インプラントの再建も適用になり、選択の幅が広がった。

患者は余裕がない

闘病中の北斗さんのブログには、多い日には2000を超える応援のコメントが寄せられる。一方、「医師から5年生存率が59%と告げられた」という北斗さんの会見の発言には、疑問の声も上がった。実際、乳がんステージ2bの5年生存率は80%とするデーターが多い。

「同じステージの患者さんから、【家族に心配されて困る】という声も聞きます」と話すのは、千葉県の乳がん患者会「アイビー千葉」の関口淳子さんだ。「北斗さん自身、病気についての理解が十分でないのでは。誠実に話したいという気持ちが伝わるだけに悩ましい」。同会の代表、斎藤とし子さん(73)は「でも、告知から手術の人は、みんな北斗さんと同じ」と続ける。「まだ病についてきちんと理解できず、前向きに等なれないのに、治療の選択などをつぎつぎにせまられる。患者は(心身ともに)いっぱいいっぱいなんです。」。

たとえば乳房再建。今は技術が進み、選択肢は広がっている。生死には直接関わらないだけに、医師は患者に選択をゆ委ねる。形は変わっても自分の胸を温存するか、全摘してよりきれいに再建するか、がんを取り切るためにとにかく全摘するかー。全摘した患者は、治療を経て歳月が流れると、乳房を失った悲しみが癒えるのか。アイピー千葉が昨年7月、会員を対象にアンケートを行ったところ、全摘後、主に5~20年経った63人のうち9人が「胸が平らであばらが見えることが今でも辛い」と答えた。一方で、33人は「直後は辛かったが、今はあまり気にならない」と答えた。

がんで体の一部を失うのは乳がんだけではない。斎藤さんは、がん経験者が患者の精神的サポートにあたる「ピアサポーター」でもある。活動の場のサロンには、意を全摘した胃がん患者やストーマー(人工肛門)を備えた大腸がん患者も来る。「治療中、辛くて電車に飛び込もうとした」なんて人もいますと言う。でも大抵の人は手術後の体を受け入れ、不具合をかわす方法を会得して、後遺症と上手に暮らせるようになるそうだ。喉頭がんで声帯を失い、新たな発声法を学ぶ音楽家のつんくさんも、前向きにがんと立ち向かう姿を示している。

がん患者が抱える不安は病についてだけではない。突然の告知は精神的な重荷となり、心まで病んでしまう事になれば、治療に与える影響も小さくない。そのために、経験者によるサポートは必要だ。

~がん克服のために~

 

 

 

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