がん克服【大腸ポリープ切除に新手法】がん発症率抑制、死亡率低下の調査結果も


●がん克服 「術後の出血抑える」

ポリープの切除は、内視鏡から送り込んだ「スネア」という金属の輪をポリープの根元の掛けて絞り込み、電流を流して焼切るのが主流だ。飛び出していなければ生理食塩水などを注射して盛り上げてから同様に焼き切る。早くから取り入れた昭和伊南総合病院(長野市駒ケ根市)の堀内朗消火器病センター長は「ポリープを含む粘膜だけを切り取る。時間が短縮され、切除後時間が経ってからの出血を抑えられる」と説明する。

焼切る手法では、切除後しばらくしてから出血するケースがあった。切口を焼く方が出血が止まりそうだが、実際は、熱によって血管が通る層までやけどが広まり、遅れての出血や、薄い大腸の壁に穴が開く危険性が高まるという。

メーカーは形状や弾力が違うスネアをそろえ、小さなポリープを摘み取る「ワニの口の様なクリップ」もある。がん細胞の見逃しや取り残しを防ぐため、ポリープの切断面にがん細胞がないかも検査する。

堀内医師は、ポリープの全切除にはがん予防の観点で重要な意味があると話す。「小さいから切らずに来年また検査しましょう」と言っても、検査に来ない人が必ずいるからだ。

米国では1993年、大腸ポリープを全て摘出した人で、大腸がんの発症率が76~90%抑制され、2012年にはその後の追跡調査で死亡率も53%下がったと報告された。このため、欧米では既にポリープの全切除が一般化しているそうである。

ただし、国内のデーターはなく、日本の診察ガイドラインでは依然として直径5㍉以下のポリープは経過観察としてもいいことになっている。

●がん克服 「検査回数減らせる」

国内では、03年11の医療機関が参加して大規模な臨床研究が始まった。ポリープを全て切除した場合にがんの発症率、死亡率がどう変化するかを調べるとともに、現在は1年後が基本とされている内視鏡の検査の間隔を大丈夫かどうかを確かめる。ポリープを全て切除した40~69歳の約2200人を2群に分け、一方は1年後と3年後に検査を計2回実施、もう一方は3年後に1回だけ検査した。研究計画通り追跡できたのは計1400人余り。がんが見つかったのは両群ともわずかで、発症率に差はなかった。研究を統括する国立がんセンター(東京)の松田尚久健診部長は「全て摘出をすれば、次の検査は3年後でいいことが示された」と話す。

対象者の検査はその後も出来るだけ継続、ポリープ切除の死亡抑制効果を確かめる。松田部長は「ポリープを全て切除した場合に内視鏡検査の間隔をさらに広げても大丈夫であることが分かれば、検査の効率も上がる。患者の負担を減らしつつ、がんの早期発見と、がん死の抑制の実現が期待される」と話している。    2015年9月10日毎日新聞朝刊より

〈がん死亡抑制に期待。〉 がん克服

 

 

 

 

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