がん克服 【口腔がんへの認識を】 


2013年6月26日 毎日新聞朝刊  歯科医師 富田嵩仁さん

口腔がん。あまり知られていませんが、舌がんなど、口の中や顎に発生する悪性腫瘍の総称です。現在、日本人の死因の1位である悪性新生物(がん)全体の2~3%ですが、日本では罹患患者数は年々増えています。一般的には中高年齢層に多く発症しますが、20~30代でもみられることがあります。

口腔がんは他のがんに比べ、比較的に見える部位にできるため、異常に気が付きやすいです。しかし、口内炎や歯周病と勘違いされ、発見が遅れることが多いのが現状です。「口内炎がなかなか治らず、数か月放置していたら舌がんだった」「歯肉から出血が続き、歯槽膿漏だと思っていたら歯肉がんだった」といった例もあります。

さらに、口腔がんは頸部のリンパ節に転移をきたすことも少なくありません。早期に発見されれば機能障害等はあまり残りませんが、舌がんが進行し舌を切除することになれば、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、発音など日常生活にかかわる機能障害が残り、QOL(生活の質)を低下させます。審美的障害も残ります。

どうしたら早期発見ができるのか? それには、口腔がんにたいする認識を一人一人が持つことが重要です。

わが国では「口の中にがんができるなんて知らなかった」という方もいます。米国などは口腔がんにかかる患者数は増えているものの、死亡数は減っています。理由は国民の口腔がんに対する認識度の高さや、定期的な健診などによる早期発見が挙げられます。

まずは、口の中にもがんができるという認識を持ち、一人一人が定期的に健診を受けるよう認識すれば、早期発見につながり、口腔がんで死亡する患者数も減少するでしょう。

一般の歯科治療も同様です。「痛くならないと歯医者にはいかない」という方がほとんどですが、痛みが出たときにはすでに病状も進んでいることが多いのです。

虫歯や歯槽膿漏も、早期発見、早期治療をおこなえば、痛みや受診回数も少なくて済みます。定期的に健診を行うことで、そのリスクも減少します。

「かかりつけの歯科医院」を持ち、定期的に診てもらう」。これはとても大切なこと。一生自分の歯でかむには、定期的なメンテナンスが不可欠です。

 

 

 

 

 

 

 

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