がん克服【神業を持つ外科医】
- 2016年07月10日
- がんの名医
高見裕子(たかみ ゆうこ)先生
国立病院機構九州医療センター 肝臓・胆道・すい臓外科科長
1965年 愛媛県今治市生まれ(今治西校)
1988年 九州大学薬学部卒業
1990年 長崎大学医学部入学
1996年 長崎大学医学部卒業 同第二外科研修医
1997年 九州医療センター外科研修医
1998年 長崎県立島原温泉病院外科医
1999年 国立療養所村山病院外科医
2002年 九州医療センター外科医
2011年 同肝臓病センター肝・胆・膵外科科長
肝機能が悪くても受けられる「マイクロ波凝固壊死療法」
肝臓がんの手術を行えるかどうか、その大きな障害となるのが肝機能だ。どんなにがんが小さくても、肝機能が悪いと治療を断念する場合が少なくない。高見先生は「そんな患者さんの為にあるのがマイクロ波凝固壊死療法だ」と明言。
周囲の反対を押し切って
高見先生の、この治療に掛ける情熱は並々ならぬものがある。研修医時代、担当教授から「才津先生の肝臓治療をよく見てきなさい」と派遣された病院で目にした才津秀樹先生(現・国立病院機構九州医療センター胆道・肝臓・膵臓外科医療企画運営部長)のマイクロ波凝固壊死療法の技術と治療成績に驚きを覚える。「これなら治療をあきらめていた患者も救える」と決心し、当時在籍していた医局の教授や周囲の反対を押し切って飛び出し、才津先生の門下生の一人となった.
今では、その才津先生も高見先生の腕に太鼓判を押すマイクロ波療法の名手となって、多くの手術で執刀医を務めている。
肝臓がん治療の位置づけが歯がゆい
「この治療の考え方は手術と同じです。がんをくり抜くように焼くので、肝切除のように肝臓を大きく切らなくてすみます。また、単にがんの中心に針を刺して焼くのでなくて、周囲の組織やがんに栄養を送る血管から焼いていくので、播種(がん細胞が散らばる)の危険性が低い。これこそ理にかなった治療」と胸を張る。
だからこそ歯がゆいのは、現在の我が国の肝臓治療における、マイクロ波凝固壊死療法の位置づけ、扱われ方と話す。国立病院機構九州医療センターでは多くの肝機能の悪い患者さんが治療を受け、元気で退院していくのにもかかわらず、一部の心無い人から「焼肉療法」と揶揄(やゆ)されたこともあると言う。「肝切除の技術がないから焼いているのだろう」とも言われ、悔しい思いをしてきた。
胆肝膵外科高度技能専門医の資格を取得
外科医としての技術の高さを証明するため、高度の技術を有する医師を認定する「胆肝膵外科高度技術専門医」の資格を取得。初年度の合格者は12名という狭き門であったがそのうちの一人が高見先生だ。
合格の通知があった時の情景を昨日のように思い出す。「そのとき、外科医にとって大切なハサミを、飛び出して(お祝いに)来た医局の教授から戴いたんです。ああ、これで恩師でもある教授から認めて戴けた、と熱いものが胸をよぎりました」と話す。
今後の目標
マイクロ波凝固壊死療法の開拓者、才津先生の跡を継ぐ者としての自覚が、熱い言葉に。
「この療法は海外も注目し始めています。しかし、日本で行っている施設は殆どありません。将来一人でも多くの患者さんがこの治療を受けられるよう、普及させて行きたいと思います」。頼もしい高見先生の言葉だ。
~がん克服~
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