がん克服 【抗がん剤で目に副作用】
- 2015年09月26日
- がんニュース
「涙が止まらず」放置で悪化、後遺症も
07年は、がんの治療をめぐり変化があった。「ティーエスワン(TS-1)」という既存の抗がん剤が、国内の大規模臨床試験の結果、胃がん手術後の再発防止などに有効とわかり、標準的な治療に位置付けられた。しかし、「TS-1」を飲み続けるていると「涙が止まらなくなる」という、涙目の発症を訴える患者が多くなった。
静岡県立静岡がんセンター眼科の柏木広哉部長が「涙目」を訴える患者の増加にきずいたのは、2007年頃。患者は翌08年4月から4年間で約200人。以前は殆どなかったのに、急に増えた印象を覚えた。
同センター消化器内科の安井博史部長は、「TS-1を比較的長時間飲み続ける人が増えた結果、涙目のの発症が多くなり注目されるようになったのではないか」と推測し、胃がん手術後にこの薬を飲んだ人を調べると、4人に1人程度の割合で、治療が必要な涙目の症状があった。
涙目は黒めの外側上方にある涙腺から分泌され、目の表面を潤した後、涙点涙小管、涙のう、鼻涙管を経て鼻へ排出される。涙点以降の経路(涙道)のどこかが炎症でせまくなったりふさがったりすると、流れが滞って涙目になる。視界がぼやけて物が見にくくなり、車の運転に支障が出たりする。
TS-1が涙目を起こす仕組みは未解明だが、成分が涙に出て涙道の粘膜を痛める可能性が指摘されている。軽傷なら成分を洗い流すため、防腐剤を含まない目薬をさす。水道水は減菌されていないので使わない。涙道が通りにくくなっていればファィバースコープで観察し、「涙管チューブ」を挿入し通過を確保する治療法がある。チューブは抗がん剤治療後に抜き取る。ただし、涙目を放置して涙道の状態が悪化すると、チューブも入れられず回復も難しくなる。早い対処が大切。しかし、涙道の治療を手掛ける眼科医が少ないことが問題。
頻度、実態分からず
TS-1以外の抗がん剤でも、結膜炎や角膜生涯、まつ毛が抜けるなど、様々な障害がある。しかし、目の副作用に対する認知度は低く、頻度などの実態ははっきりしていない。がん細胞の特定の分子を狙い撃ちする「分子標的薬」と呼ばれる抗がん剤の一部でも最近、目の副作用が出ることが分かってきた。光を感じる網膜に水がたまるなどして、物が歪んで見えたり、かすんでみえたりする。症状によっては抗がん剤治療を休んだ方が良い場合もあり、注意深く変化を観察し早めに手をうつことが大切だ。しかし、抗がん剤治療を担当する医師と眼科医が同一施設内で連携して治療に当たることができる医療機関は少ない。
異常を感じたら早めの相談を
柏木さんは、抗がん剤を受ける患者への一般的な注意として、「目にも副作用が出る可能性があることを知った上で、異常を感じたらまず主治医に相談し、必要に応じ専門の眼科医を紹介してもらってほしい」と話す。同センターは、抗がん剤治療で起きる可能性がある目の症状や対処法などをまとめた小冊子「抗がん剤治療と目の症状」を作成。ホームページで公開している。
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