がん克服【がん情報を一元化】


年間85万人全患者登録

 日本人の死因で最も多いがんの実態を把握し、予防や治療に生かすため、全てのがん患者の情報を国がデーターベース化して一元管理する「全国がん登録制度」が今年から始まった。「がん登録推進法」に基づき、全国の病院に都道府県を通じて患者の情報を国に届けることが義務付けられた。患者には、同じがん・進行度の患者の治療法や経過などの情報を得られるメリットがあるが、個人情報の管理や利用法については課題も残る。

今月からスタート

 全国約8500の病院と一部の診療所は、今月以降、がんと診断した患者について26項目を都道府県を通じて国へ届けなければならない。項目は氏名生年月日・性別・診断日・居住地・がん発見の経緯・種類や進行度・治療内容・・・など。

 継続して集計・分析する事により、患者は医療機関の治療成績を比較でき、同じがん・進行度の患者の治療法や経過に関する情報を得られるようになる。一方、治療や健診の検証も可能になり、地域特有のがんの傾向に合わせた対策もできる。

 これまでも、都道府県レベルの「地域がん登録」が行われてきたが、病院が任意で参加する方式で、信頼性には地域差があった。1年間にがんにかかった人の数は約85万人。(11年)だが、14県のデータを基にした推計値のため、全国の実際の数値は把握されていない。

 都道府県別のがんにかかった人の数やその種類・進行度などの集計結果が公表されるのは18年の12月ごろの予定。データーベースを運用する国立がん研究センターの、がん対策情報センターは「次世代の診療内容の改善につながる基礎データー。長期的な視点でみてほしい」と話す。

北欧・米国などはすでに事業化

 日本人の死因は1981年以降、がんが1位を占め、2014年にがんで亡くなった人は36万8103人。当会(がんを克服する会)でも、数年前から問題提起していたが「がん登録」の仕組み作りは諸外国に比べ遅れていた。

 すい臓がんの支援団体のNPO法人「パンキャンジャパン」の真島喜幸理事長は「患者の数が少ない希少がんは患者がどのように分布しているか分かっていない。患者の実態がつかめれば、有効ながん対策になるのではないか」と期待して話す。

 既に北欧や韓国などは国の事業として実施している。米国・豪州では各州が実施主体となって法や規則を作り、全国をカバーしている。

 日本では、各々の病院が都道府県の「登録室」に患者の情報を提出し、都道府県の担当者が専用線で結ばれた国立がんセンターが運用する「全国データーペース」に入力する。登録情報は患者の同意なしに進められる。全数を登録して偏りの無いデーターを得るためだ。

 NPO法人「地域がん登録全国協議会」の田中英夫理事長(愛知県がんセンター研究所)によると、ほとんどの国は個人識別番号を使って運用されていて、「識別番号なしに、1億人規模の国で登録事業を運用するのにはかなりの困難がともなう」と予測する。ある患者の登録重複を防ぐために、名前・住所・生年月日、居住地で個人を識別する等必要があり、労力がかかるためだ。

 社会保障と税の共通ナンバーの運用が始まっているが、現段階では登録には使用せず、将来的な検討課題になるという。

~がん克服のために~

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