がん克服【胃がん患者を助けたい】世界初胃カメラ・日本で開発
- 2015年11月19日
- がんのお話
内視鏡の歴史・人間の目を超えた内視鏡
内視鏡のルーツは、古代ギリシャ時代にさかのぼる。「医聖」と呼ばれるヒポクラテスの全集には、痔の治療のために肛門に鏡を差し込んで直腸を観察した記述が残されている。
1805年 ドイツの医師ボッチニが金属製の筒を尿道や直腸、咽頭に入れてランプの光で観察する「導光器」を作成。
1853年 フランスの医師デソルモが尿道や膀胱を観察する器具を作成。エンドスコープ(内視鏡)と命名。
1868年 ドイツの医師クスマウルが長さ47㌢直径13㍉の金属管を大道芸人(剣を飲み込む芸人)の胃に差し込み、手元のランプを頼りに、世界で初めて生きた人間の胃を検査した。
1932年 ドイツの医師クスマウルが先端に豆電球をつけた「軟性胃鏡・長さ75㌢、直径11㍉」を開発。
その後、管の先に小型カメラを付けた胃カメラの原型も登場したが、画像が不鮮明で実用には使えなかった。
1949年 東京大学病院小石川分院の宇治達郎医師が、カメラメーカーの「オリンパス」に胃カメラの制作を依頼。
1950年 オリンパスの技術陣が世界で初めての「胃カメラ」の試作機が完成。だが、胃の中でストロボをたき、感光させたフイルムを抜き取って現像する仕組みだったため、診断に時間がかかった。
1964年 胃カメラにガラス繊維を導入したファイバースコープ型内視鏡を開発。生の映像を観察が可能に。
1960年代後半 先端にポリープを切断するハサミが取り付けられる。この時点で内視鏡は観察器具から治療器具となった。
1985年 内視鏡の先端に電荷結合素子(CCD)を取り付けたビデオスコープが国内販売になり、複数の医師の同時観察が可能になる。
1987年 フランスの外科医モレが、ビデオスコープの映像をモニターで見ながら胆のう摘出手術に成功。
1991年 内視鏡を用いた胃の切除手術が開始される。
1992年 内視鏡を用いた胆のう摘出手術が国内で保険適用になる。
1997年 イスラエルの研究者がカプセル内視鏡の原型を発明。
2012年 内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」の前立腺がん治療が保険適用になる。
2014年 8Kカメラを搭載した内視鏡で初の胆のう摘出手術。
2015年 ソニーとオリンパスが4Kカメラ搭載の内視鏡を発売。
「胃がん患者を助けたい」
宇治達郎東大病院医師の思いが届いた
「胃カメラ」の開発は、1949年に東大病院の宇治達郎医師がカメラメーカーの「オリンパス」に開発を依頼したのが始まりだった。その年、新入社員で開発部門に配属された中坪寿男さん(同社元専務・86歳)は、宇治医師が「胃がんを早期発見できれば、多くの患者を助けることができる」と会社に粘り強く説く姿をよく覚えていると話す。
胃がん死亡率が低下
長い間、胃がんは日本人のがん死因のトップであった。それが、この半世紀で胃がん死亡率は8割も減ったことは、内視鏡の進化と無縁ではない。1949年に「胃カメラ」を手掛けた「オリンパス」は消化器内視鏡で世界の7割のシェアを誇る。
世界で初めて「8Kカメラ」(約3300万画素)
搭載内視鏡で手術
昨年11月、杏林大学病院で世界で初めて「8Kカメラ」を搭載した内視鏡を用いた胆のう摘出手術が行われた。大型モニターには患部の細い血管や薄い粘膜の映像が映し出された。血管を誤って切るなどのミスの軽減が期待される。産学連携で開発を進める千葉敏雄・日本大学総合科学研究所教授は「人間の限界を超える《目》を手に入れた。今後この目に見合う《手》、つまり超精密な治療ロボットが求められていくことになる」と話す。
~がん克服のために~
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